2026.10.02 (金)

無申告で税務調査を受けたら、所得税だけ払えば終わり?見落としやすい税金と国民健康保険料

個人事業の確定申告をしていなかったところ、税務署から税務調査の連絡が入った。このような場合、まず気になるのは「所得税をいくら払うことになるのか」ではないでしょうか。

 

しかし、無申告への対応で確認すべき負担は、所得税だけではありません。年によっては消費税の申告も必要です。さらに、所得が明らかになることで、住民税や個人事業税、国民健康保険料・税にも影響する可能性があります。

 

これらは、すべて税務署から一度に請求されるわけではありません。所得税を納めた後、別の時期に自治体から通知が届くこともあります。税務署に納める金額だけを見て資金を準備すると、その後の支払いに対応できなくなるおそれがあります。

 

今回は、個人の無申告について税務調査を受けた際に、確認しておきたい負担の全体像を解説します。

   

まずは、何年分の申告が必要かを確認する

税務調査の連絡を受けたら、最初に確認したいのは対象となる年と税目です。複数年にわたって申告していなければ、年ごとに売上、経費、所得控除などを整理する必要があります。

 

無申告だからといって、売上の全額に所得税がかかるわけではありません。事業のために支出した必要経費を確認したうえで所得を計算します。また、所得税額を計算する際には、該当する所得控除なども確認します。

 

通帳や請求書、売上の記録、領収書、クレジットカード明細など、当時の取引を確認できる資料を集めましょう。資料が足りない場合にも、確認できた事実と確認できていない事項を分けて整理することが大切です。

 

特に複数年分をまとめて確認するときは、「今年の売上と昨年の経費を混ぜてしまう」といった間違いに注意が必要です。支払日と取引の内容も確認しながら、年ごとの収支をまとめます。

 

ここで把握する所得は、所得税だけでなく、後述する住民税や個人事業税、国民健康保険料・税を見積もる際にも関係します。最初の資料整理が、負担全体を把握するための土台になります。

 

所得税の本税以外にも、加算税や延滞税がある

確定申告の期限までに申告書を提出していなかった人が、期限を過ぎて初めて申告する場合、その手続は原則として「期限後申告」です。すでに提出した申告書の税額を訂正する「修正申告」とは異なります。

 

期限後申告では、計算した所得税・復興特別所得税の本税に加え、無申告加算税が課される場合があります。また、納付が遅れた期間に応じて、延滞税が生じる場合もあります。申告の時期や調査の状況、過去の申告状況などによって取扱いが変わるため、税額を見積もる際には個別に確認が必要です。

 

例えば、所得税の本税だけを集計して「これだけ用意すれば大丈夫」と考えていると、加算税や延滞税の分が不足する可能性があります。無申告の年が複数ある場合には、各年分について本税と附帯税を分けて確認しましょう。

 

なお、税務調査の連絡を受けた後であっても、申告内容を急いで決めるべきではありません。まず資料に基づいて売上や経費を確認し、申告すべき内容を正確に整理することが重要です。

 

消費税の申告が必要な年も確認する

個人事業主に売上があれば、必ず消費税を納めるというわけではありません。消費税の課税義務は、原則として基準期間の課税売上高などを基に判定します。特定期間の売上高等や、インボイス発行事業者の登録状況についても確認が必要です。

 

ここで注意したいのは、所得税と消費税では、申告が必要かどうかの判断が異なることです。例えば、所得税について数年分の期限後申告が必要でも、消費税については特定の年だけ申告が必要となる場合があります。

 

また、所得税の計算では「売上から必要経費などを差し引いた所得」を確認しますが、消費税では課税売上高や課税仕入れなど、別の観点から取引を整理します。所得税の申告書を作成しただけで、消費税の確認まで終わったとはいえません。

 

消費税の申告が必要だった年に申告していなければ、消費税・地方消費税の本税に加え、無申告加算税や延滞税が生じる場合があります。所得税とは別の納付額として、年ごとに見積もる必要があります。

 

所得が判明すると、住民税にも影響する

所得税の期限後申告をすると、その申告内容は住民税の計算にも関係します。

 

所得税の確定申告書を提出した場合、通常は同じ所得について、別途、市区町村へ住民税の申告書を提出する必要はありません。しかし、これは「住民税を納めなくてよい」という意味ではありません。

 

申告されていなかった所得が明らかになれば、その所得に対応する住民税について、市区町村から通知が届く可能性があります。すでに住民税を納めていた人でも、追加の所得を反映した結果、税額が増えることがあります。

 

住民税は、所得税と支払先が異なります。税務署で所得税の手続を終え、所得税の納付を済ませたとしても、その時点ですべての支払いが完了したとは限りません。

 

特に注意したいのは、通知が届く時期です。税務署への納付に資金を充てた後、時間を置いて住民税の通知が届く場合があります。「税務調査への対応は終わった」と思っていたところに追加の支払いが発生しないよう、住民税も当初から見積りに含めておきましょう。

   

個人事業税がかかる場合もある

事業の内容によっては、都道府県に納める個人事業税も確認が必要です。

 

ただし、個人事業主であれば誰にでも個人事業税がかかるわけではありません。対象となる事業かどうかに加え、事業所得や控除額などを踏まえて判定します。

 

愛知県では、年間を通じて事業を行った場合、個人事業税の計算上、年290万円の事業主控除があります。一方、所得税の計算で青色申告特別控除を受けている場合でも、個人事業税にはその控除を適用できません。このため、所得税の申告書に記載された所得金額だけを見て、個人事業税がかからないと判断することはできません。

 

所得税の確定申告書を提出した場合、通常は個人事業税の申告書を別に提出する必要はありません。ただし、確定申告書の「住民税・事業税に関する事項」には、必要な内容を記載します。税務署へ提出する申告書であっても、地方税に関する記載を確認することが大切です。

 

個人事業税が発生するかどうか、発生するならどの年分についていくら程度になるかは、所得税とは分けて確認しましょう。

 

国民健康保険料・税も増える可能性がある

税金以外で見落としやすいのが、国民健康保険料・税です。

 

国民健康保険に加入している場合、その保険料・税の計算には所得が関係します。無申告だった年の所得が後から明らかになると、該当する年度の保険料・税が再計算され、追加の納付が必要になる可能性があります。

 

例えば名古屋市は、確定申告の情報が保険料の当初の計算に間に合わなかった場合、後から申告内容に基づいて計算し、改めて通知すると案内しています。所得の訂正によって保険料を再計算する場合もあります。

 

もちろん、無申告だった人全員に追加の国民健康保険料・税が発生するわけではありません。その期間に国民健康保険へ加入していたか、所得はいくらか、すでにどのように計算・納付されていたかによって結果は変わります。会社の健康保険に加入していた期間について、国民健康保険料・税が当然に追加されるわけでもありません。

 

また、国民健康保険は自治体によって「保険料」または「保険税」として扱われ、計算方法なども異なります。具体的な金額や通知の見込みは、加入していた自治体ごとに確認する必要があります。

 

住民税と同様、国民健康保険料・税も税務署への納付とは別に通知され得る負担です。所得税と消費税だけで資金を使い切らないよう、注意しましょう。

 

まとめ|支払先と納付時期を分けて、全体像をつかむ

無申告の税務調査後に確認する主な負担は、次のように整理できます。

 
確認する負担主な支払先発生するかどうかの確認点
所得税・復興特別所得税、加算税・延滞税税務署各年の所得、申告・納付の状況
消費税・地方消費税、加算税・延滞税税務署各年の消費税の課税義務
住民税市区町村各年の所得など
個人事業税都道府県事業の種類、所得、控除額など
国民健康保険料・税市区町村など加入期間、所得、既に納めた額など
 

必要な負担を漏らさないためには、「何年分か」「いくらか」「どこへ納めるか」「いつ支払う見込みか」を一覧にすることが有効です。まだ通知が届いておらず金額を確定できないものは、確定額と区別して概算額や「要確認」と記載します。

 

税務調査への対応では、まず資料に基づいて正しい所得と税額を確認することが重要です。そのうえで、所得税・消費税だけでなく、住民税、個人事業税、国民健康保険料・税まで視野に入れれば、今後必要になる資金をより現実的に見積もれます。

 

次回は、この全体像を踏まえ、期限後申告に向けて納税資金をどう確認・準備するかを解説します。

 
 

税務調査に関して不明な点があれば、弊所までお気軽にお尋ねください。

 

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コラムの内容は、国税庁等の公式見解を示すものではありません。詳細は顧問税理士にご相談ください。当コラムの活用において生じた損害の一切の責任は負いかねます。

記事の著者

スタートアップサポート税理士法人代表者。
総合病院の勤務医のような存在よりも、個々の企業にとってのホームドクターのような存在でありたいと考えております。
日々の細かい会計処理のことから資金繰りや雇用、助成金、企業経営者にとって何でも気軽に相談できる良きパートナーとして専門的知識を生かしていきたい所存です。