2026.10.09 (金)

無申告の税務調査で納税資金が足りない?期限後申告の前に確認したい資金繰り

前回は、個人の無申告について税務調査を受けた場合、所得税・消費税だけでなく、住民税や個人事業税、国民健康保険料・税にも影響する可能性があることを説明しました。

 

負担の全体像が見えてくると、次に問題になるのが「どうやって支払うか」です。数年分の申告が必要な場合、過去の税金をまとめて納めることになり、手元資金だけでは足りないこともあります。

 

そこで大切なのが、申告内容を正確に整理すると同時に、納税資金の見通しを立てることです。今回は、期限後申告に向けた資金繰りの確認方法と、納付が難しい場合の対応を解説します。

   

申告書を出してから資金を考えるのでは遅い?

無申告だった人が、期限を過ぎて初めて確定申告書を提出する手続は、原則として「期限後申告」です。国税庁は、期限後申告によって納める税金について、申告書を提出した日が納期限となり、その日に納めると案内しています。

 

つまり、申告書を提出してから「納付までに資金を準備しよう」と考えても、時間の余裕はありません。税額の見込みが立ち始めた段階で、現在の預金や今後の入金予定を確認する必要があります。

 

一方で、資金が全額そろうまで申告を先延ばしにする、という意味ではありません。国税庁は、申告を忘れていた場合にはできるだけ早く申告するよう案内しています。資料の整理と税額の計算を進めながら、納付が難しい見込みなら早めに税務署へ相談することが重要です。

 

「正しい申告」と「納付の準備」を、並行して進めましょう。

 

まずは納付額を「確定額」と「概算額」に分ける

資金繰りを考える際、最初に作りたいのは支払額の一覧です。前回説明した負担を、対象となる年ごとに並べます。

 
負担の種類金額を確認する際のポイント
所得税・復興特別所得税各年の所得、所得控除などを確認する
消費税・地方消費税各年の課税義務と申告内容を確認する
加算税・延滞税本税とは分けて見積もる
住民税・個人事業税後日、自治体から通知される可能性を見込む
国民健康保険料・税加入期間や所得による再計算の可能性を確認する
 

この段階では、すべての金額を確定できるとは限りません。売上や経費の確認が終わっていない年もあれば、住民税や国民健康保険料・税について、自治体からの通知を待つものもあります。

 

そこで、一覧には「確定」「概算」「要確認」の区分を付けます。数字が入っていない欄をゼロと考えないことが大切です。特に、所得税と消費税の計算が進んだ段階で、それ以外の負担を一覧から漏らしてしまうと、必要な資金を少なく見積もることになります。

 

また、無申告加算税や延滞税は、本税と分けて記載します。期限後申告や納付の時期によって確認が必要な部分もあるため、見積りの前提が分かるようにしておきましょう。

 

「合計いくらか」だけでなく「いつ払うか」を見る

必要な資金の合計額が分かっても、それだけでは資金繰り表として十分ではありません。支払う時期も重要です。

 

所得税と消費税の期限後申告による納付、後日通知される可能性がある住民税や個人事業税、国民健康保険料・税は、すべて同じ日に請求されるわけではありません。国税の納付を終えた後に、自治体から別の通知が届くこともあります。

 

さらに、過去の税金だけを見てはいけません。現在も事業を続けているなら、家賃や仕入代金、従業員の給与といった通常の支払いがあります。今後の税金や保険料も発生します。

 

例えば、預金の大部分を過去の税金の納付に充てた結果、翌月の仕入代金や給与が払えなくなっては、事業の継続に支障が出ます。反対に、日々の支払いだけを優先し、納税資金を全く残さなければ、税金の未納が続く可能性があります。

 

そこで、税金などの支払予定と、事業・生活に必要な支出を、月ごとに並べてみましょう。いつ、いくら不足するのかが分かれば、取るべき対応も具体的になります。

 

手元の預金は、全額を納税に使えるわけではない

預金残高を見て「税金を払えそうだ」と判断する前に、その預金を何に使う予定だったのかを確認します。

 

個人事業では、事業用口座に入っているお金から、仕入代金や外注費、家賃などを支払うことがあります。生活費も必要です。売掛金があっても、実際に入金される時期が先であれば、直ちに納付へ回せる資金にはなりません。

 

次のように分けて確認すると、納付に充てられる金額を考えやすくなります。

 
  • 現在の預金・現金
  • 入金日を確認できる売掛金など
  • 近いうちに支払う仕入代金・外注費・給与・家賃
  • 生活に必要な支出
  • 通常の事業に伴って今後納める税金や保険料
 

入金予定は、取引先との契約や過去の入金状況を踏まえて確認します。「売上があるから来月には払えるはず」といった希望だけで資金計画を作らないことが大切です。

 

こうして、納付に充てられる金額と不足額を把握します。不足額が分かって初めて、資金調達や納付相談について具体的に検討できます。

   

税金の未納があると、借入れにも影響する?

納税資金が不足すると、「申告を済ませてから金融機関で借りればよい」と考えるかもしれません。しかし、借入れを確実な資金源として予定に組み込むことには注意が必要です。

 

金融機関の融資では、申告書や事業の収支、納税状況などが確認される場合があります。日本政策金融公庫も、個人事業主の事業資金の申込みについて、原則として直近2期分の確定申告書・決算書を準備するよう案内しています。また、融資の種類によっては納税証明書が提出資料になります。

 

納税証明書には、未納の税額がないことを証明する種類もあります。未納がある状態は、資金繰りや返済可能性について金融機関が確認する材料になり得ます。

 

ただし、「未納があれば必ず融資を受けられない」とは断定できません。審査の内容や必要書類は、金融機関や融資制度によって異なります。借入れを検討する場合には、申告・納税の状況と資金使途を正確に伝え、必要書類や融資の可能性を早めに相談しましょう。

 

特に避けたいのは、期限後申告による納付額が確定した後で初めて借入れを申し込み、融資を受けられる前提で支払予定を組むことです。融資には審査があり、希望どおりの金額や時期に資金を調達できるとは限りません。

 

一度に納付できない場合は、早めに相談する

税額を計算した結果、手元資金や見込まれる入金だけでは一度に納められないこともあります。その場合、納付できない状況を放置せず、所轄の税務署の徴収担当へ早めに相談しましょう。

 

国税には、一定の要件を満たす場合の猶予制度があります。国税庁は、一時に納付すると事業の継続や生活の維持が難しくなる場合などに、申請によって納税や財産の換価が猶予されることがあると案内しています。ただし、相談すれば自動的に猶予が認められるわけではありません。資産や収支の状況、納付計画などを確認したうえで判断されます。

 

猶予制度を検討する場合にも、「いくらなら、いつ支払えるのか」を示せるよう、預金残高や入金予定、事業・生活に必要な支出を整理しておくことが役立ちます。

 

住民税や個人事業税、国民健康保険料・税について納付が難しい場合は、それぞれ通知を出す自治体の担当窓口にも相談が必要です。税務署に国税の相談をしただけで、他の支払いについても相談が済むわけではありません。

 

まとめ|申告と納付に向けて、進める順序

無申告について税務調査を受けたら、次の順序で確認すると、申告内容と資金繰りの両方を整理しやすくなります。

   

大切なのは、納税資金が足りないという問題を、申告内容の確認とは別の「後で考えること」にしないことです。期限後申告による税金は申告書の提出日が納期限となるため、申告の準備を進める段階から資金繰りを確認する必要があります。

 

無申告の税務調査では、正確な申告を行うことと、発生する負担をどう納めるかを考えることが、どちらも欠かせません。税務署へ納める額だけで判断せず、後から通知され得る税金や国民健康保険料・税、今後の事業資金まで含めて見通しを立てましょう。

 
 

税務調査に関して不明な点があれば、弊所までお気軽にお尋ねください。

 

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コラムの内容は、国税庁等の公式見解を示すものではありません。詳細は顧問税理士にご相談ください。当コラムの活用において生じた損害の一切の責任は負いかねます。

記事の著者

スタートアップサポート税理士法人代表者。
総合病院の勤務医のような存在よりも、個々の企業にとってのホームドクターのような存在でありたいと考えております。
日々の細かい会計処理のことから資金繰りや雇用、助成金、企業経営者にとって何でも気軽に相談できる良きパートナーとして専門的知識を生かしていきたい所存です。