2024.09.27 (金)
スタートアップ企業に税理士は必要?メリットや依頼したほうが良い理由について解説します。
スタートアップ企業とは、新規創業する企業のなかで革新的なアイデアやイノベーションをもち、それこそ社会を変えるような斬新な企業を指す言葉です。
スタートアップ企業という名称の由来はIT企業の聖地ともいわれるアメリカ・シリコンバレーにあり、それを聞いただけでも納得できるのではないでしょうか。
本記事ではスタートアップ企業、つまり革新的な事業を始める方が税の専門家「税理士」が必要なのかを、具体的な問題提起をしながら解説します。
あなたの事業はスタートアップ企業ですか?定義について知りましょう
新規に事業を起こすことを日本語では「起業」という一文字で表しますが、現在ではスタートアップ企業とベンチャー企業に分けて認識されるようになりました。
もしあなたが起業を考えているとしたら、この2分類のどちらに近いのか把握していた方が失敗の確率を減らせるでしょう。 そこでスタートアップ企業とベンチャー企業の明確な違いについて説明します。
今一つ分かりにくいスタートアップ企業の定義
新規に事業を起こすことに違いはなくても、一つはスタートアップ企業とされ、それ以外はベンチャー企業と分類される理由はどこにあるのでしょうか。
そのヒントは起業する側というより、投資する側にあると考えれば分かりやすくなります。
スタートアップ企業への投資とは、ハイリスクハイリターンを絵にかいたようなもので、出資したスタートアップ企業が成功すれば莫大な利益を上げられる投資先です。
具体例を挙げれば、ジェフ・ベゾスが起業してインターネット小売りの雄となったAmazonや、マーク・ザッカーバーグが始めたMeta(旧称: Facebook, Inc.)などがあります。急成長して巨大な利益を回収するアメリカIT企業をイメージすれば分かりやすいでしょう。
スタートアップ企業とは新機軸を打ち出せているかどうかによる
AmazonやMetaの事例を見れば分かりやすいように、スタートアップ企業とは他社が行っていない新機軸を打ち出して爆発的な成功を収める、あるいは成功を目指す企業のことです。 Amazonの創業は1994年のことで、創業当時(実際には1999年らしい)には有名な以下の写真のようなオフィスでアイデアを煮詰める作業をしていただけでした。
しかし創業者のジェフ・ベゾスにはインターネット物販の可能性について揺るぎない自信があり、出資者へ対しても当分赤字続きだと明言していたといいます。
赤字の先に成功を確信していた典型的な事例ですが、投資家相手に大見えを切っていた彼の苦労は想像に難くありません。
新規開業で苦労するポイントとは?
今となって分析してみれば、Amazonが成功できた大きな理由は比較的辛坊強い投資家によって事業が支えられたことです。
スタートアップ企業は成功しさえすれば大きなリターンを見込めますが、最大の問題点は成功するまで運転資金が覚束ないことでしょう。
とくに新規事業へ投資するという文化が根付いていない日本では、目新しいビジネスモデルへの理解が得られにくいという弱点があります。
この資金的な難しさはスタートアップ企業に限らず、起業したほとんどすべての経営者に共通した課題です。
ごく最近の例でいえば、日本独自のAI開発を目指している「サカナAI社」が大手都銀を含めた複数の出資を受けて話題ですが、このような例は稀有な事例だといえます。
スタートアップ企業が税理士を活用するメリット
スタートアップ企業の定義や資金面での難しさは理解できたと思いますが、ここからは創業時から税理士を活用すべきか否かについて考えてみましょう。
詳しい理由については後述するとして、結論から先にいえば「ほとんどデメリットはなく、むしろ徹底的に活用すべき」です。
唯一失敗する可能性があるとすれば、それはスタートアップ企業の特徴を知らずに旧態然とした関与しかしない税理士に依頼することだけでしょう。
ここからは、スタートアップ企業だけではなく全ての起業家が税理士を活用するメリットを解説します。
出来ることなら会社設立時からサポートを受けよう
ほとんどの起業家が何もないところから事業を始めるわけですが、それだからこそ起業時に信頼できる税理士に相談しサポートを受けるべきです。
例えばスタートアップ企業を法人としてスタートするとして、法人設立の検討や資金調達など煩雑な業務を税理士事務所に任せきることができます。
つまり起業家が最大限注力すべき事業に集中できる環境が整い、それだけでも大きなアドバンテージになるでしょう。
税理士にも様々なタイプがいますが、保守的な考え方をする税理士より新しいことへ理解をしてくれる税理士がオススメです。
一般的かつ保守的な税理士は、過去の経験や成功例を引き合いに出すことが多く、リスク回避を重視するのでスタートアップ企業の考え方と合わない可能性があります。 ただ、理解があり柔軟な思考を持つ税理士であれば企業の大きな力になるでしょう。
バックオフィス業務は軽視されがち
ほとんどのスタートアップ企業やベンチャー企業は、当たり前のように稼ぐことに全力を注ぐものです。
つまり経理や労務管理などのバックオフィス業務は後回しになりがちで、それが後々の苦労となって跳ね返ってきます。
創業から時がたつほど税務調査のリスクが高まり、何より雑な経理処理はIPOが視野に入ってきたときに大きなマイナスとなるでしょう。 起業から軌道に乗るまでは、とくに税理士を使い倒すくらいの感覚でいることが正解です。
設立当初の悩みのほとんどは資金繰り
先ほども解説したとおり、スタートアップ企業の特徴は企業から黒字化するまで時間のかかることで、資金繰りが最大の悩みとなるはずです。
今では世界的なブランドとなったソニーですが、創業当時は資金に事欠き共同創業者だった盛田昭夫氏の実家(酒屋)から給与が支払われていたという逸話が語られています。
どんなに優れたアイデアがあっても事業が継続できなければ夢を実現できません。
資金繰りや資金調達に関して税理士はエキスパートなので、中長期の計画を含めて税理士を活用することがオススメです。
利益を上げるほど可能性の高まる税務調査
スタートアップ企業やベンチャー企業にとって、目指すべきゴールは近いものではないはずですが、利益を上げ始めた企業は税務署にとっては注目すべき存在に映るはずです。
利益を上げるのは成功の通過点に過ぎなくても、そんなタイミングで税務調査はやってきます。
その時の調査対策はもちろん。それ以前の節税対策や事前準備など税理士は頼れる存在です。
将来的に上場を夢見るならキレイな財務諸表が必要
スタートアップ企業を起業するなら将来的な株式上場も視野に入れているでしょうが、その準備は起業当初から考えておくべきものです。
起業してから黒字化に成功し、業績を上げながらIPOの準備に入ったとき失敗するのは多くの共通点があります。
以下の失敗を防ぐためには起業時から綿密に計画を立てることが早道で、その点でも信頼できる税理士探しは重要なポイントです。
- 内部統制に不備があった
- IPO準備中に業績が悪化
- 制度会計が基準に達していなかった
- 企業評価の低下(多くは杜撰な過去がほじくり返される)
- そもそもの準備不足(上場延期などに繋がる)
高い志を持ち続けることが重要なのですが、成功が見え始めるとタガが緩んでしまうことはありがちなことです。 そんなときには耳の痛いことでもコンプライアンスを重視してくれる税理士の存在は助かるもので、目標を見失わないよう助けてくれるでしょう。
スタートアップ企業が税理士を頼るデメリットはあるの?
スタートアップ企業がスタートするにあたってのメリットをお伝えしてきましたが、逆に税理士を頼るデメリットは存在するのでしょうか。
この点について実際のところを深く考えてみましょう。
税理士報酬が払えないようなら事業化は厳しい現実
スタートアップ企業が税理士を活用するとき、当たり前のことながら一定の顧問報酬を支払わなければなりません。
金銭的に考えればデメリットなのでしょうが、その程度の出費を惜しむようでは大きな成功を掴むことはできないでしょう。
スタートアップ企業やベンチャー企業にとっての税理士は、なにより集中すべき本来業務に集中するための補助的な存在です。
もちろんバックオフィス業務を含めた全てを切り盛りできるスーパーマンであればいいのですが、この世にどれほどいるのでしょうか。 経営のリソースを最大限に活かすためには、利益を生まない業務は徹底的に(最初のころこそは)外注するのが成功の近道です。
まとめ
スタートアップ企業が税理士を活用すべき理由について解説しました。これはスタートアップ企業だけではなく多くの起業家に共通することで、限りある経営資源を事業に集中するために税理士は利用すべきです。
もちろん事業が軌道に乗り、さらなるステージが見えてきたら別の考えも浮かぶでしょうが、がむしゃらさが必要な創業期こそ税理士を活用しましょう。
税務調査に関して不明な点があれば、弊所までお気軽にお尋ねください。
TEL:0586-48-5507
FAX:0586-64-6644
コラムの内容は、国税庁等の公式見解を示すものではありません。詳細は顧問税理士にご相談ください。当コラムの活用において生じた損害の一切の責任は負いかねます。