2024.11.28 (木)
スタートアップ企業の資金調達の方法・重要性とは?税理士がポイント・注意点について解説します
目次
近年目にすることの多い「スタートアップ企業」というワードですが、ゼロから起業するという点ではベンチャー企業などと同じです。
そのようなスタートアップ企業がぶち当たる大きな壁が資金調達であり、事業のアイデアと同じくらい重要なポイントとなります。
本記事では、スタートアップ企業の資金調達方法や、意外と知られていない事業セグメントごとの重要ポイントについて税理士が解説します。
スタートアップ企業が使える資金調達方法
よく「日本ではスタートアップ企業が少ない」と言われますが、その原因の一つが資金調達の難しさにあります。
それでもスタートアップ企業向けの資金調達方法は確実に増えているので、まずはスタートアップ企業が使える資金調達方法を確認してみましょう。
デット・ファイナンス
少し前まで起業するときの最もポピュラーな資金調達方法が「デット・ファイナンス」で、分かりやすくいえば金融機関や公的機関からの融資によって資金調達することです。
スタートアップ企業は、事業実績のない状態からスタートすることがほとんどなので、デット・ファイナンスで利用できるのは以下の3つに限られるでしょう。
- 日本政策融資公庫の新事業育成資金
- 信用保証協会の保証付き融資
- 地方自治体や機関からの制度融資
デット・ファイナンスは返済する必要があるため、事業が軌道に乗るまで時間がかかりすぎると資金繰りが破綻するリスクを伴います。
エクイティ・ファイナンス
エクイティ・ファイナンスとは、投資家や投資会社などからの出資を受ける資金調達方法で、スタートアップ企業が次々と生まれるアメリカではメジャーなものです。
投資家側から考えてみると、投資先のスタートアップ企業が成功した暁には莫大な利益を上げられますが、ダメだった場合はゼロリターンとなります。
日本でスタートアップ企業が資金調達に苦労するのは、このような投資方法が浸透していないことが大きな理由でしょう。
ただ近年では「Sakana AI株式会社」のように、事業価値を評価されエクイティ・ファイナンスによる資金調達に成功している企業も現れています。
助成金や補助金
最近は国が主導してスタートアップ企業を育てようとする政策が多く、助成金や補助金の活用も有力な資金調達方法となっています。
言い方は悪いかもしれませんが、助成金や補助金の申請要件を満たしさえすれば資金調達できます。
ただ、使い勝手が良いとはいえず資金調達方法のメインに据えるのは考えものです。
基本的には「使えればラッキー」くらいに考えておくべき資金調達方法だといえます。
クラウド・ファイナンス
よく聞くことのあるクラウド・ファイナンスは、多くの場合仲介業者を通して、不特定多数の個人などから資金を調達する方法のことを指します。
事業化と将来性についてしっかりとしたアピールが必要ですが、スタートアップ企業にとってリスクの少ない資金調達方法です。 ただ、確実性という点ではそれほど高望みはできないため、始める事業内容がクラウド・ファイナンスと相性が良いのか検討しなければなりません。
アセット・ファイナンス
企業が保有する資産を売却して資金調達をする方法がアセット・ファイナンスで、スタートアップ企業にとって縁遠い資金調達方法かもしれません。
ただ、創業期を過ぎたあとであればアセット・ファイナンスも使い勝手がよく、売上債権を譲渡するファクタリングサービスはスタートアップ企業にとって強い味方です。
社債
社債とは企業が資金調達を目的として、投資家からの金銭の払込みと引き替えに発行する債券のことを指します。
大手企業であればこの通りなのですが、スタートアップ企業や中小企業の場合、社債の引受先は金融機関であることがほとんどで実質的には融資です。
ただ、本当に有望で将来性のある事業ならば、転換社債型新株予約権付社債など選択肢の多い資金調達方法かもしれません。
スタートアップ企業の資金調達と事業の進捗状況の関係設定
スタートアップ企業といっても、革新的なアイデアを思いついただけの段階と、ある程度収益化ができている段階では資金調達方法とその難易度は大きく変わってきます。
これは一般的な起業であっても同じことがいえるので、ここではスタートアップ企業の成長段階ごとの資金調達について考えてみましょう。 なお、真に大切なポイントは事業内容だということは当たり前の前提条件です。
アイデアはあるが事業開始前(シード期)
起業前もしくは起業後間もない段階にある企業の成長ステージを「シード期」といいます。
この段階では、商品やサービスのアイデアを具体的に形作ることに注力し、ほとんどの場合は収益が発生しません。
また革新的なアイデアになるほど、ビジネスモデルが確立されておらずニーズが本当にあるのかさえ分からないフェーズです。
この段階での資金調達が一番難しく(特に日本で)、考え得る資金調達方法は「エクイティ・ファイナンス」か「クラウド・ファイナンス」でしょう。
ただ、事業化への道筋が比較的明確な場合は、日本政策金融公庫の新事業育成資金を利用することも可能です。
収益化に至っていない時期(アーリーステージ期)
画期的なアイデアを形にしたとしても、すぐに市場で受け入れられるほど甘いものではなく、市場からのフィードバックを得ながら事業内容を微調整しなければなりません。
このようなステージを「アーリーステージ期」と呼び、必要資金と資金調達の乖離が一番大きい時期です。
アーリーステージ期で行き詰るスタートアップ企業は非常に多く、この時期を乗り越えられるかどうかが成否を左右するといってもいいでしょう。
この時期でも頼れる資金調達先は、ベンチャーキャピタルなどの投資家や日本政策金融公庫などの公的金融機関です。
いよいよ上昇する前夜(ミドル期)
アーリーステージ期を乗り切りビジネスの黒字化に成功、あるいはその目途が立った時期を「ミドル期」といいます。
黒字化に成功したといっても多くのスタートアップ企業はさらなる成功を目指しているはずで、これまで以上に多くの資金が必要になっているでしょう。
ただ、この時期になるとそれまで融資に消極的だった金融機関も関心を示すはずなので、資金調達の選択肢は広がっているはずです。
またミドル期には事業そのものの範囲が海外展開やM&Aなど多角的になっているので、企業の信用を高める意味でも多額な資金調達が必要になってきます。
IPOも視野に入ってくる時期(レイター期)
アイデアを事業化し順調に成長してIPO(株式公開)も視野に入っている時期を「レイター期」といいます。
日本の経済産業省などもスタートアップ企業の定義を「出口戦略(イグジット)を検討している」とし、暗にIPOがゴールかのようにしています。
ただ、スタートアップ企業のIPOはあくまで結果なのであって、最初からIPOをゴールに定めるとむしろミドル期を迎えられない可能性があることに留意しましょう。
これは創業場所によっても考えるべき問題で、地方独自のスタートアップ企業は東京のそれと同じ成長過程になるはずはありません。
ちなみに、レイター期に至ったスタートアップ企業には、借りようとする前に「借りてくれ」という先が圧倒的に多くなっており、資金調達方法の取捨選択が重要な時期です。
それぞれの時期に適切なアドバイスをしてくれる税理士を選びましょう
アッと驚くビジネスアイデアを具現化するスタートアップ企業は、そのすべての過程がファンタジーといえるものです。
事業開始にあたって割ける人的リソースは限られているので、少なくともアーリーステージ期までは信頼できる税理士の活用がオススメです。
スタートアップ企業の資金調達は、アイデアやプレゼンだけでは難しく、相手を納得させる事業計画などの作成が必須となります。
このような本業以外の業務は税金や資金繰りの専門家に任せ、本来業務に集中することが成功の近道です。
まとめ
最近になって日本の公官庁もスタートアップ企業の重要性に気づき、その後押しをする政策も多くなりました。
夢のあるスタートアップ企業ですが、成功するためには画期的なアイデアとともに、確実な資金調達は必要不可欠です。
創業者が全てを切り盛りするのは難しいことなので、利用できる外部コンサルは積極的に活用しましょう。
またIPOまで視野に入れるのであれば、スタートアップ企業の支援実績がある税理士を探すことがオススメです。
税務調査に関して不明な点があれば、弊所までお気軽にお尋ねください。
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