2026.06.12 (金)

税務署から「相続税のお尋ね」が届いたら?まず知っておきたい意味と注意点

相続が発生すると、葬儀、役所の手続き、金融機関への連絡、不動産や保険の確認など、ご遺族は多くの手続きに追われます。

そうした手続きが少し落ち着いてきたころ、税務署から「相続税についてのお尋ね」や「相続税の申告等についてのご案内」といった書類が届くことがあります。

 

突然、税務署から封筒が届くと、「税務調査が始まったのか」「相続税を必ず申告しなければならないのか」「何か疑われているのか」と不安に感じる方も少なくありません。

 

しかし、「相続税のお尋ね」が届いたからといって、直ちに税務調査が始まったという意味ではありません。

 

これは、税務署が把握している一定の情報をもとに、相続税の申告が必要となる可能性がある方へ、申告の要否を確認するために送付される書類と考えると分かりやすいです。

   

相続税のお尋ねとは何か

相続税のお尋ね」とは、亡くなった方の財産や相続人の状況を確認し、相続税の申告が必要かどうかを検討するための書類です。

 

税務署から送付される書類の中には、「相続税の申告要否検討表」が同封されていることがあります。

この書類では、亡くなった方の住所・氏名・死亡日、相続人の人数や続柄、不動産、株式・投資信託、預貯金・現金、生命保険金、死亡退職金、その他の財産、相続時精算課税による贈与、生前贈与、債務や葬儀費用などを記入する形式になっています。

 

国税庁の様式でも、預貯金・現金、不動産、株式等、生命保険金・死亡退職金、相続時精算課税、亡くなる前の贈与、債務・葬式費用などを記入する欄が設けられています。

 

ここで注意したいのは、「相続税の申告要否検討表」は相続税の申告書そのものではないという点です。

国税庁の様式にも、「相続税の申告要否検討表」は相続税の申告書ではない旨が記載されています。

 

つまり、この書類を提出したからといって、相続税の申告をしたことにはなりません。

相続税の申告が必要な場合には、別途、相続税申告書を作成し、期限内に提出する必要があります。

 

なぜ税務署は相続があったことを知っているのか

ご遺族の方から税務署に連絡していなくても、税務署は相続が発生したことを把握しています。

 

これは、死亡に関する情報が行政機関を通じて国税当局に共有される仕組みがあるためです。

国税庁の「相続税法第58条通知に係る戸籍情報等の提供運用要領」では、相続税法第58条第1項の規定による通知として、法務省が国税庁に死亡または失踪に関する情報を提供することが示されています。

 

そのため、「税務署に何も言っていないのに、なぜ分かったのか」と不思議に思う必要はありません。

死亡届などの手続きにより、相続の発生に関する基礎的な情報は、法律に基づく仕組みの中で税務署側にも伝わると理解しておくとよいでしょう。

 
 

お尋ねが届いたら、相続税が必ずかかるのか

「相続税のお尋ね」が届いたからといって、相続税が必ず発生するわけではありません

 

相続税は、亡くなった方の財産の価額から債務や葬式費用などを差し引き、一定の加算対象となる贈与財産などを加えた金額が、基礎控除額を超える場合に課税されます。

国税庁は、基礎控除額について「3,000万円+600万円×法定相続人の数」と説明しています。

 

たとえば、法定相続人が配偶者と子ども2人の合計3人であれば、基礎控除額は4,800万円です。相続財産の合計がこの基礎控除額以下であれば、原則として相続税はかかりません。

 

ただし、ここでいう財産には、預貯金や不動産だけでなく、有価証券、生命保険金、死亡退職金、貸付金、自動車、貴金属、骨とう品なども含まれる可能性があります。

また、亡くなる前の一定期間内の贈与や、相続時精算課税を利用した贈与財産も相続税計算に影響する場合があります。

 

そのため、「自宅と預金だけだから大丈夫だろう」「親族名義の預金だから関係ないだろう」と安易に判断するのは危険です。

 

相続税の申告期限にも注意

相続税の申告が必要な場合、申告期限は原則として、被相続人の死亡したことを知った日の翌日から10か月以内です。

国税庁も、相続税の申告および納税が必要となる場合の期限について、通常は死亡の日の翌日から10か月以内と説明しています。

 

「お尋ね」が届くタイミングは、相続開始後しばらく経ってからになることが多いため、届いた時点で申告期限まで十分な時間が残っていないこともあります。

 

相続税の申告には、戸籍の確認、相続人の確定、財産調査、不動産評価、預貯金の残高証明取得、過去の通帳確認、生命保険金や死亡退職金の確認、債務や葬儀費用の整理など、多くの作業が必要です。

 

特に、不動産がある場合や、預貯金・有価証券が複数の金融機関に分かれている場合、生前贈与がある場合、家族名義の預金がある場合には、確認に時間がかかることがあります。

 

お尋ねは税務調査ではないが、放置は避ける

「相続税のお尋ね」は、税務調査そのものではありません

 

ただし、税務署が相続税の申告が必要となる可能性を確認している段階であることは確かです。

したがって、何もせずに放置するのは望ましくありません。

 

相続税がかからないと判断できる場合でも、その判断の根拠を整理しておくことが大切です。

預貯金、不動産、生命保険金、死亡退職金、生前贈与、借入金、葬儀費用などを確認し、基礎控除額と比較して申告の要否を検討する必要があります。

 

一方で、相続税の申告が必要となる可能性がある場合は、「お尋ね」に回答するかどうかよりも、まず相続税申告の準備を優先すべきです。

お尋ねへの回答は申告書の提出ではないため、申告期限内に正式な相続税申告書を提出しなければなりません。

 

まとめ

税務署から「相続税のお尋ね」が届いても、直ちに税務調査が始まったわけではありません。

これは、税務署が把握している情報をもとに、相続税の申告が必要かどうかを確認するための書類です。

 

ただし、届いたということは、税務署が何らかの理由で「相続税の申告が必要となる可能性がある」と見ているとも考えられます。

 

相続税のお尋ねが届いた場合は、慌てる必要はありませんが、放置せず、相続財産の全体像を整理し、申告が必要かどうかを早めに確認することが重要です。

特に、不動産、預貯金、有価証券、生命保険金、生前贈与、家族名義の預金などがある場合には、専門家に相談しながら慎重に確認することをおすすめします。

   
 

税務調査に関して不明な点があれば、弊所までお気軽にお尋ねください。

 

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コラムの内容は、国税庁等の公式見解を示すものではありません。詳細は顧問税理士にご相談ください。当コラムの活用において生じた損害の一切の責任は負いかねます。

記事の著者

スタートアップサポート税理士法人代表者。
総合病院の勤務医のような存在よりも、個々の企業にとってのホームドクターのような存在でありたいと考えております。
日々の細かい会計処理のことから資金繰りや雇用、助成金、企業経営者にとって何でも気軽に相談できる良きパートナーとして専門的知識を生かしていきたい所存です。