2024.07.26 (金)

税務調査時の領収書の重要性とは?管理方法、紛失時の対応方法について解説します。

   

あまり好ましいことではないのですが、税務調査を受けるときに「領収書を紛失してしまった」というケースを目にします。

そのような時、頭のなかをよぎるのは「経費が認められず追徴課税されるのかも」ということでしょう。

本記事では、税務調査における領収書の重要性や、その管理方法と紛失時の対応について詳しく解説します。

税務調査の目的と調査官が注目するポイント

税務調査と聞けば「難癖付けて税金を毟り取る」というイメージで語られることが多く、ほとんどの事業者から忌み嫌われる対象です。

ただ、日本の税制においては国民自ら申告する制度になっていて、国税当局側の立場で考えれば「嘘つきがいる」と思うのも無理のないことでしょう。

そこで税務調査というものがどのような目的で行われ、税務調査官が注目しているポイントについて知ることにします。

税務調査はどのような目的で行われるのか?

所得税や法人税、そして消費税など、事業に伴う税金は申告納税制度となっているので、納税者の誤りや悪質な脱税などが考えられます。

はっきり言ってしまえば国税当局は疑っていて、税務調査を「このような誤った申告が横行し、納税者間に課税の不公平感が生じないよう、国税庁およびその管轄組織により、納税義務が適正に果たされていないと認められる納税者に対して、その誤りを正すために行われる」としています。 もちろん全ての税務調査が脱税案件として行われるわけはないにせよ、基本的には「そのような疑いの目」で見られていると思うべきです。

 

税務調査で重点的にチェックされる内容

税務調査は漠然と行われるものではなく、分かりやすくいえば「少しでも多くの追徴課税を得る」ために行われます。

そのため重点的にチェックするポイントは以下のとおりで、いかに納税者を疑っているかが分るでしょう。

  • 売上の計上漏れ
  • 経費の過大計上

もちろん、これらに付随して様々な調査を実施するのですが、税務調査官も所詮は勤め人で評価を欲していることを理解しましょう。

つまり「少しでも税金を徴収」し、「効率的に調査を遂行」しながら「できるだけトラブルを避けたい」というのが本音です。 そんな本音を知っておけば税務調査に対する対策も立てやすくなりますが、あくまで正しい申告が基礎にあることは理解しましょう。

 

税務調査と領収書の関係を知っておく

税務調査で調べられる支出項目に関して、それを証明する重要な書類が領収書ですが、それが無ければどうなるのかなど詳しく理解されていません。

そこで税務調査における「領収書」の意味合いについて、基本的なことから考えてみましょう。

そもそも「領収書」とは何なのか?

税務調査というものは、事業を行い法律の定めに従って確定申告をするうえで副次的に発生する事故のようなものです。

その税務調査で領収書の持つ意味は、本当に損金経理をしている支出が確かになされているかを確認する書類に過ぎず、本来の目的を利用しているにすぎません。

領収書とは事業者間において、支払い行われていることを証明することが最大の目的です。

つまり税務調査で領収書を確認するのは、本当に取引が行われたかどうか、つまり経費として計上できるものかどうかをチェックしています。

したがって、領収書がないとしても経費を支出したことを証明できれば、税務調査で経費を否認される筋合いではありません。

例えばクレジットカードで経費を決済していて、その利用明細があれば大丈夫です。

領収書が無ければ確実に調査官の心証は悪くなる

領収書が無くても経費を否認されないにしても、あった方がより確実であることは確かです。

しかも重要なことは、領収書もない現金支出を経費計上しているケースで、調査官の心証はかなり悪くなります。

先ほども触れたとおり税務調査官も普通の勤め人で感情を持っているので、心証が悪ければ「絶対に何か掴んでやる」と思う可能性があります。

うっかり領収書を紛失したのなら仕方ありませんが、わざと領収書を捨てるような行為はマイナス面しか考えられません。

領収書の管理方法はどうするのが正解?

領収書などの原始記録は、法律上求められているのは「保存」することなので、キレイに整理している必要はありません。

大きな法人のように「従業員の支出を厳密に管理する」といった目的があれば別ですが、個人事業主は記帳したあとの領収書を再び見ることは稀です。

そうであれば、領収書を月ごとに整理するなどの行為は几帳面さをアピールする効果以外はないといえます。 むしろ税務調査が捗ることなので、保存に重点を置き整理・管理については考え過ぎなくても大丈夫です。

 

消費税では領収書がなければ即アウト!

法人税法や所得税法には、「領収書等を保管しなければ、経費として認められない」ということは一切記載されていません。

ところが消費税に関しては領収書だけに限らず「インボイス(適格請求書)」の保存が求められています。

無ければ仕入税額控除が認められないので、かなり大きな問題といえるでしょう。

気になる話ですが、国税当局は領収書等が無ければ経費として認めないという方向に導きたいらしく、以下のような要望を出しています。

「必要経費及び損金の額の算定における帳簿及び請求書等の保存義務規定の新設 ~所得税法第37条及び法人税法第22条第3項の損金の額への算入要件として、「帳簿及び請求書等の保存」を要件とする旨の規定を新設する」 簡単にいえば消費税と同じように書類がなければ「即否認」としろ・・・という内容です。

調査がくるのに領収書が無いときはどうする?

もし税務調査を受けるにあたって領収書が無いとき、一体どのように対処すればよいのでしょうか。

普通に確定申告をしていればあまり考えられないケースですが、何らかの事情で紛失したり、そもそも無申告であったりすれば無い話ではありません。

ただ、領収書や請求書などの書類が無かったとしても、支出したことを証明することができれば否認されることはないでしょう。

それに加え支出内容が本当に「経費として妥当なのか」を証明する必要があるので、大きな支出ほど取引先に再発行を依頼することなども検討すべきです。

基本的には原始記録はしっかり保管しましょう

当り前のことですが、領収書などの原始記録には以下のような法定保存期間が決められているので、しっかり保管することを意識しましょう。

事業者の種類法定保存期間
法人7年(青色繰越欠損金が生じた事業年度や、白色申告をした事業年度で災害損失金額が生じた場合には、10年間)
個人事業主(青色申告)7年(繰越欠損金の控除の適用を受ける場合は、10年)
個人事業主(白色申告)5年

この法定保存期間は法人税あるいは所得税で定められたものなので、もし個人事業主の白色申告であったとしても消費税の仕入税額控除の適用を受けている場合は、消費税法の7年という保存期間が優先します。

まとめ

領収書の保存については、その必要性が広く知られています。とはいえ紛失などの可能性もあるので、税務調査がある場合など税理士などに相談する事をオススメします。

法人税あるいは所得税に関しては対処のしようがあるにせよ、インボイス制度で注目される消費税では仕入税額控除の要件が領収書を含むインボイスの保存です。 書類の整理は面倒であったとしても、日ごろから意識することが無駄な税金を避けるための第一歩だと知っておきましょう。

税務調査に関して不明な点があれば、弊所までお気軽にお尋ねください。

 

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コラムの内容は、国税庁等の公式見解を示すものではありません。詳細は顧問税理士にご相談ください。当コラムの活用において生じた損害の一切の責任は負いかねます。

記事の著者

スタートアップサポート税理士法人代表者。
総合病院の勤務医のような存在よりも、個々の企業にとってのホームドクターのような存在でありたいと考えております。
日々の細かい会計処理のことから資金繰りや雇用、助成金、企業経営者にとって何でも気軽に相談できる良きパートナーとして専門的知識を生かしていきたい所存です。