2024.10.28 (月)
【スタートアップ企業必見!】法人の決算月の決め方・注意点・ポイントについて税理士が解説します
目次
法人の設立時に決めなければならないことは多く、一事業年度の最終月である「決算月」もその一つです。
本記事では、法人の決算月の決め方や注意点、そして決算月による特徴などについて税理士が詳しく解説します。
法人の決算月は自由自在に決められる現実
法人の決算月とは、事業年度の最終月のことを指し決算期とも言います。全ての法人は、事業年度ごとの収支をまとめ決算を行わなければなりません。
まずは法人の決算月についての法律の取り決めや、基本的な事項について押さえることにしましょう。
法人設立時に重要な定款で決めることができる決算月
法人は、会社法と法人税法によって一定期間の利益と損失を報告することが求められていて、この一定期間のことを「事業年度」と言います。
その事業年度の最終月が決算月で、会社設立時に自由に決めることができ、途中で変更することもできます。
だた、自由とはいっても1年を超える事業年度にすることはできず、1年ごとに決算をする法人がほとんどです。
参考までに国税庁が公表している令和3年度の「決算期別の普通法人数」をみると、3月決算が515,359社と最も多く、9月決算と12月決算がそれに続きます。
変則的な決算月はありなの?
決算月は1年以内の事業年度であれば自由に決められますが、それ以外に制約はないので決算月の最終日にする必要はありません。
定款に定めれば「1月20日決算」とすることもでき、また6ヶ月ごとの事業年度にすることも可能です。
先ほども参照した「決算期別の普通法人数」では、年2回決算にしている法人が25,650社あり全体の約0.9%になります。
注意すべき点は税法に定められている申告期限と納付期限で、原則「事業年度終了日の翌日から2月以内」です。 つまり「1月20日決算」の場合、法人税と消費税の申告を3月20日までにしなければならず、納税もその日までに済ませなければなりません。
一般的な会社設立で考えるべき決算月
決算月は自由に決められるとはいえ、やはり様々な都合を考慮したうえで決めることが重要です。 では決算月をどう決めればよいのか、ここからは考慮すべきポイントごとに考えてみることにしましょう。
理想をいえば設立月から一番遠い月にしよう
法人が迎える最初の決算は、法人設立の日から1年以内にしなければなりません。最初の事業年度は可能な限り長くすることが無難で、決算月は設立日から1番遠い月にすることがオススメです。
会社設立直後は事業を含めてやることが多いはずで、すぐに決算を迎えることは本業へ良い影響を与えないでしょう。
また法人の資本金が1,000万円未満であれば、1期目と2期目(条件による)は消費税が課税されないので、その期間を長めにとることが節税となります。
ただ、インボイスの関係で課税事業者にならざるを得ない場合はこの限りではありません。
繁忙期から考える決算月
繁忙期がハッキリしているような事業では、決算月の決め方に2つの考え方ができます。
一般的に繁忙期は資金繰りにも余裕があり、納税資金を考慮すればあえて繁忙期に合わせた決算月にすることが考えられます。
また企業によっては繁忙期を決算月にすることで、売り上げ達成に向けた社内の士気を上げるような事例もあるようです。
一方で決算時には様々な書類作成や会計処理が必要になるので、繁忙期を避けた決算月にすることも合理的な考え方でしょう。
また自社の繁忙期だけではなく、顧問税理士の忙しい時期を避けることもポイントです。
そうすることで決算時により相談時間なども確保できるので、設立前に税理士に相談してみるとよいでしょう。
税務調査に備える決算月の選び方
法人を設立する段階で税務調査まで意識することはないでしょうが、決算月は少なからず税務調査に影響があります。
それは税務署の年間スケジュールを考えれば分かることで、2~9月決算の法人は税務調査の可能性が高い傾向が見られます。
税務署の定期人事異動が毎年7月で、そこから12月までが税務調査の繁忙期です。税務署の法人部門は通常2月決算法人から調査をスタートさせます。
法人の申告書の申告期限が「事業年度終了日の翌日から2月以内」であることを考えると、9月決算法人までの調査確率が高いことが分かるでしょう。 ただ、これは傾向であって絶対ではありません。1月決算だからといって油断は禁物です。
スタートアップ企業と決算月の設定
スタートアップ企業とは、新規創業する企業のなかで革新的なアイデアやイノベーションをもち、それこそ社会を変えるような斬新な企業を指す言葉です。
では、そのようなスタートアップ企業の場合、決算月の決め方に特徴はあるのでしょうか。 ここからはスタートアップ企業の決算月の決め方について考えてみます。
やはり基本は一番遠い月を設定
スタートアップ企業は、取り組む事業内容に革新性や特徴があっても、会社法や法人税法による縛りは普通の法人となんら変わりはありません。
先ほども解説したとおり、決算月は設立日から1番遠い月にすることが基本です。
スタートアップ企業は、斬新なアイデアを事業化することに経営リソースのほとんどを割かれるはずで、設立後すぐに決算を迎えるような決算月の決め方はマイナスになるでしょう。
ただ、スタートアップ企業で苦労する資金繰りの点を考慮すれば、銀行の貸出しが増えやすい3月(年度末)に最新の決算書を提出できる12月決算にするのもオススメです。
スタートアップ企業が消費税負担を減らすための決算月
スタートアップ企業も資本金が1,000万円未満であって、特定期間の課税売上高又は給与の支払い総額が1,000万円以下であれば、2期目まで消費税の課税が免除されます。
この「特定期間」というのは、法人であれば全事業年度(つまり1期目)開始の日から6ヶ月間のことを指します。
2期目まで消費税が免税になるのは、資金的に余裕のないスタートアップ企業とっては大きなポイントです。
もちろん1期目からスタートダッシュを決め、大いに売上高を延ばすことのほうが良いのですが、そうでもなければ可能な限り節税すべきでしょう。
もし、1期目開始から6ヶ月間で売上高が1,000万円を超えそうであれば、1期目の決算期を設立日から7ヶ月以内にする方法があります。
消費税法第九条二において特定期間が定められていて、そこには「その事業年度の前事業年度(七月以下であるものその他の政令で定めるもの(次号において「短期事業年度」という。)を除く。)がある法人当該前事業年度開始の日以後六月の期間」とあります。
そして次号には短期事業年度である法人について、「その事業年度の前々事業年度(その事業年度の基準期間に含まれるものその他の政令で定めるものを除く。)開始の日以後六月の期間」とあるので、新設法人については存在しない期間です。 このテクニックはスタートアップ企業だけに当てはまるものではないので、インボイスの登録事業者になる必要がなければ検討してみましょう。
決算月による注意点を知っておこう
法人が自由に決められる決算月であっても、場合によっては工夫する必要や、自社以外の事情を考慮しなければなりません。
日本において3月決算が圧倒的に多い背景を知りながら、決算月の注意点を考えてみましょう。
やはり多い3月決算と注意点
日本の普通法人の約18%が3月を決算月としていて、資本金1億円以上の企業に限れば50%以上が3月決算法人となっています。
これだけ3月決算が多い一番の理由は、国や地方自治体の会計年度が4月から翌年3月までだからです。
公的機関と取引をしている法人は大企業が多く、事業年度を国などに合わせた方がスムーズな事業運営ができやすいので3月決算が多くなっています。
また、そのような大企業と取引をする中小法人も「右へ倣え」のケースが多く、結果として3月決算が多いのです。
ただ、3月決算法人が多いということは、対応する税理士にとっても超繁忙期なので、税理士事務所によっては顧問契約を受けてもらえないケースもあります。
これは上場を目指すスタートアップ企業にも影響があり、3月決算へ対応するニーズが高すぎて監査法人選定が難しくなっています。
決算月の変更方法
法人の決まり事を書いてある定款には、決算月の記載をしなければなりません。つまり決算月を変更するということは、定款の変更をすることです。
定款を変更するためには、株主総会の特別決議による変更が必要で、「発行済株式総数の過半数にあたる株式を有する株主が株主総会に出席」し、「出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成」で決定されます。
この特別決議というのは、会社法第309条第3項や4項で定められている、会社にとって特に重要な事項を決議するために必要とされる株主総会決議です。
つまり自由に決められる決算月も、株主が増え利害関係者が多くなると簡単に変更ができなくなります。
まとめ
法人の決算月は、会社設立時には非常に自由度の高い選択を行えますが、基本的には1期目の事業年度を1年間に近づけるように決めるのがオススメです。
ただ、一度決めてしまうとオーナー企業以外は簡単に変更できないケースもあるので、様々な可能性を考え税理士にも相談してみた方がよいでしょう。
場合によっては税負担にも影響することから、安易に考えてはいけないのが決算月選びです。
税務調査に関して不明な点があれば、弊所までお気軽にお尋ねください。
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