2026.08.21 (金)

銀行との付き合い方で、資金調達は半分決まります

銀行は「お金を借りる時だけ行く場所」ではありません。

 

「銀行には、お金が必要になった時だけ相談に行けばいいですよね。」

 

銀行員時代、この言葉を何度も耳にしました。

 

もちろん、資金が必要になった時に銀行へ相談することは間違いではありません。しかし、銀行勤務25年の中で数多くの融資案件や企業審査に携わってきた経験からお伝えしたいことがあります。

 

資金調達は、融資の申し込みをした日から始まるのではありません。

 

実は、その何年も前から始まっています。

 

銀行との付き合い方によって、融資相談がスムーズに進む会社もあれば、同じような業績でも苦労する会社もあります。その違いは、決算書だけでは説明できません。

 

今回は、私が25年間銀行員として感じ続けてきた、「銀行との付き合い方で資金調達は半分決まる」という理由についてお話ししたいと思います。

   

銀行は「初めて会う会社」に慎重になる

銀行は融資の相談を受けると、まず会社を理解しようとします。

 

どんな事業なのか。どんな経営者なのか。何に強みがあるのか。資金繰りはどうなっているのか。将来どんな会社を目指しているのか。

 

もしその会社と初めて話をするのであれば、当然ながら確認することは多くなります。

 

一方で、以前から定期的に話をしている会社であればどうでしょうか。

 

経営方針も知っています。設備投資の予定も聞いています。取引先の状況も把握しています。社長の考え方も理解しています。

 

当然、融資の相談もスムーズになります。

 

これは特別なことではありません。人と人との信頼関係と同じです。

 

「借りる時だけ銀行へ行く会社」はもったいない

銀行員時代、資金が苦しくなって初めて相談に来られる会社も少なくありませんでした。

 

「来月の支払いが厳しくなりました。」

「急ぎで融資をお願いしたい。」

 

もちろん銀行も真剣に対応します。

 

しかし、もっと早く相談していただければ、選択肢はもっとあったかもしれない。そう思うことが何度もありました。

 

例えば、

 
  • 設備投資を考え始めた段階
  • 大型受注が決まった時
  • 採用を増やそうと思った時
 

こうしたタイミングで相談いただければ、資金計画も一緒に考えることができます。

 

銀行は、困ってから相談する場所ではなく、困らないために相談する場所でもあるのです。

   

銀行は「相談してくれる会社」を理解できる

銀行員として安心感を持てた会社には共通点がありました。

 

それは、良い話も悪い話も共有してくださることです。

 

「今期は利益が出そうです。」

「設備投資を予定しています。」

「主要取引先の売上が少し落ちています。」

「人を採用する予定です。」

 

こうした話を普段から聞いていると、会社の状況がよく分かります。

 

すると、融資相談になった時にも、背景が理解できます。

 

銀行は、突然現れた数字だけで判断するより、経営の流れを理解している会社の方が安心して相談を受けられるのです。

 

印象に残っている二人の社長

今でも忘れられない二人の社長がいます。

 

A社の社長は、年に数回銀行へ来られました。融資の相談ではありません。

 

「こんな設備投資を考えています。」

「新しい取引先が増えました。」

「来年は採用を強化したいと思っています。」

 

そんな話をしてくださいました。

 

銀行としても、会社の成長を一緒に見ている感覚がありました。

 

数年後、大型設備投資の相談がありました。準備も十分。資金計画も整理されていました。融資はスムーズに進みました。

 

一方、B社の社長とは、資金が不足した時だけお会いしていました。

 

決算書だけを見る。資金が足りない。急いで相談。

 

もちろん対応しました。しかし、会社のことを一から理解する必要があります。銀行としても慎重になります。

 

二社の違いは、業績ではありません。

 

日頃の対話でした。

 

銀行は「紹介」もしている

銀行は融資だけをしていると思われがちです。

 

しかし実際には、取引先同士を紹介することもあります。

 
  • 税理士
  • 司法書士
  • 社会保険労務士
  • 不動産会社
  • 保険会社
  • 取引先企業
 

銀行員時代、私も何度もご紹介をしてきました。その時に考えていたことがあります。

 

「この会社なら安心して紹介できる。」

 

銀行との信頼関係は、融資だけではありません。会社の可能性を広げることにもつながります。

 

銀行は経営者の「考え方」を見ている

銀行員時代、決算書だけで融資を決めたことはありません。

 

もちろん数字は見ます。利益も見ます。自己資本も見ます。

 

しかし、その数字をどう考えているのか、設備投資の目的は何か、借入をどう活用するのか。経営者の考え方を知りたいと思っていました。

 

だからこそ、普段から話ができる会社ほど理解が深まります。

 

融資は、数字だけの仕事ではありません。人と人との仕事でもあるのです。

 

私が独立後、最初に信用金庫を回った理由

銀行を退職して独立した時、私は最初に地域の信用金庫を訪問しました。

 

「営業活動ですか。」と聞かれることがあります。でも違います。

 

私がつくりたかったのは、経営者のためのネットワークです。

 

銀行員時代、金融機関との関係があることで設備投資が進んだ会社、採用できた会社、事業承継が成功した会社をたくさん見てきました。

 

反対に、相談相手がいないために、良い事業でも機会を逃した会社もありました。

 

だから私は、独立したらまず金融機関との信頼関係を築こうと思いました。

 

それは自分のためではありません。

 

将来出会う経営者の選択肢を増やしたかったからです。

 

私がこのテーマを伝え続ける理由

銀行員として25年間、真面目に経営している会社ほど、銀行を「お金を借りる場所」とだけ考えていることがありました。一方で銀行も、「もっと早く相談していただければ。」と思っていました。

 

経営者は、銀行に迷惑をかけたくない。銀行は、もっと会社のことを知りたい。どちらも会社を良くしたいと思っています。

 

でも、見ている景色が違う。私はそのすれ違いを何度も見てきました。

 

だから銀行を辞めました。銀行を否定したかったわけではありません。

 

銀行の考え方を経営者に翻訳したい。経営者が安心して銀行と話せるようになってほしい。

 

融資を受けるためではありません。

 

経営者が自信を持って経営判断できるようになってほしい。

 

それが今の私の使命です。

 

「付き合い方」が会社の未来を変える

銀行との付き合い方は、特別なことではありません。

 

頻繁に接待をすることでもありません。無理に融資を受けることでもありません。

 

大切なのは、会社の状況を共有し、相談できる関係を少しずつ築いていくことです。

 

銀行も人です。会社のことを理解できれば、より適切な提案ができます。

 

相談しやすい関係があれば、資金調達だけではなく、経営そのものの安心感も変わってきます。

 

まとめ

銀行との付き合い方で、資金調達は半分決まります。それは、銀行が特別扱いするという意味ではありません。

 

普段から会社を理解していることで、必要な時に適切な判断がしやすくなるということです。

 

銀行との関係づくりで大切なのは、

 
  • 借りる時だけ銀行へ行かない
  • 良い話も悪い話も共有する
  • 設備投資や採用など、早めに相談する
  • 会社の方向性を伝える
  • 長期的な信頼関係を築く
 

銀行は「融資をする相手」を探しているのではありません。

 

長く地域を支えていく経営者と、一緒に歩んでいきたいと考えています。

 

もし今、銀行との付き合いは融資の時だけだと思っているのであれば、一度、資金調達という視点ではなく、「経営の相談相手」という視点で銀行と向き合ってみてください。

 

その積み重ねが、数年後の資金調達だけでなく、会社の未来そのものを大きく変えることにつながるはずです。

 
 

税務調査に関して不明な点があれば、弊所までお気軽にお尋ねください。

 

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コラムの内容は、国税庁等の公式見解を示すものではありません。詳細は顧問税理士にご相談ください。当コラムの活用において生じた損害の一切の責任は負いかねます。

記事の著者

銀行勤務25年。法人融資・企業審査・事業支援業務を通じて、多くの中小企業の資金調達や財務改善に携わる。
現在は「銀行と経営者をつなぐ財務翻訳者」として、銀行の考え方や財務の見方を分かりやすく伝える活動を行っている。
本コラムでは、融資のテクニックではなく、経営判断に役立つ視点をお伝えしています。