2026.06.26 (金)

妻名義の預金は誰のもの?専業主婦の配偶者名義の預貯金と相続税調査

相続税の税務調査では、亡くなった方本人の預貯金だけでなく、配偶者や子ども、孫など、家族名義の預貯金について確認されることがあります。

 

特に問題になりやすいのが、配偶者が長年専業主婦であった場合の、配偶者名義の預貯金です。

 

「妻名義の通帳なのだから、当然妻の財産ではないのか」

「夫婦で生活してきた中で貯めたお金なのに、なぜ相続税で問題になるのか」

「夫から生活費を受け取り、妻がやりくりして残したお金は誰のものなのか」

 

このような疑問を持たれる方は少なくありません。

 

相続税では、預貯金の名義だけで財産の帰属が決まるわけではありません。重要なのは、そのお金の原資がどこから来たのか、誰が管理していたのか、誰が自由に使える状態だったのか、贈与が成立していたといえるのか、といった実質的な事情です。

   

相続税では「名義」だけで判断しない

相続税は、亡くなった方から相続や遺贈などにより取得した財産について課税される税金です。相続税の計算では、各人の課税価格を合計した正味の遺産額から、基礎控除額を差し引いて課税遺産総額を計算します。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」とされています。

 

ここで問題になるのは、亡くなった方の財産に何を含めるかです。

 

たとえば、通帳の名義が妻であっても、その預金の原資が夫の収入であり、通帳や印鑑を夫が管理し、妻が自由に使える状態でなかった場合には、実質的には夫の財産ではないか、という確認が行われることがあります。

 

このように、口座名義は家族であっても、実質的には亡くなった方の財産と判断される預金を、実務上「名義預金」と呼ぶことがあります。

 

名義預金の問題は、相続税の税務調査で非常に確認されやすい論点です。特に、亡くなった方に比べて配偶者や子どもの収入が少ないにもかかわらず、多額の預貯金がある場合、その資金の出どころを確認されることがあります。

 

専業主婦の配偶者名義の預金が確認されやすい理由

配偶者が専業主婦であった場合でも、配偶者名義の預金がすべて問題になるわけではありません。

 

専業主婦であっても、配偶者自身の固有財産は当然あり得ます。

 

たとえば、結婚前から持っていた預金、独身時代に働いて貯めたお金、親から相続した財産、親族から正式に贈与を受けた財産、自分名義の年金や不動産収入から貯めた預金などは、配偶者自身の財産として説明できる場合があります。

 

一方で、配偶者自身に大きな収入がないにもかかわらず、配偶者名義の定期預金や普通預金が多額にある場合には、「そのお金はどこから来たのか」が確認されやすくなります。

 

たとえば、夫が会社員や経営者として長年収入を得ており、妻は専業主婦で収入がほとんどなかったとします。それにもかかわらず、妻名義の預金が数千万円ある場合、その預金が妻自身の収入や相続、贈与によって形成されたものなのか、それとも夫の収入を妻名義の口座に移していただけなのかが問題になります。

 

ここで大切なのは、専業主婦だから預金を持ってはいけない、ということではありません。問題になるのは、その預金について、配偶者自身の財産であると説明できるかどうかです。

 
 

税務調査で確認されやすいポイント

配偶者名義の預金について、相続税調査で確認されやすいのは、主に次のような点です。

 

まず、預金の原資です。入金のもとになったお金が、配偶者自身の給与、年金、相続財産、贈与財産などであれば、その資料を確認することになります。一方で、亡くなった方の給与、事業収入、不動産収入、退職金、保険金、不動産売却代金などが原資になっている場合には、亡くなった方の財産を配偶者名義で管理していたのではないかと確認される可能性があります。

 

次に、通帳や印鑑、キャッシュカードを誰が管理していたかです。名義は妻であっても、通帳や印鑑を夫が保管し、入出金も夫が行っていた場合には、妻が自分の財産として自由に管理していたとは言いにくくなります。

 

また、妻がその預金の存在や残高を知っていたかも重要です。本人が口座の存在を知らなかった、または自由に引き出すことができなかった場合には、実質的な所有者が誰であったかについて疑問が生じます。

 

さらに、その預金が実際に誰のために使われていたかも確認されます。妻名義の口座から夫の事業資金、夫名義の不動産の費用、夫の生活費、夫の借入返済などが支払われている場合、その預金の実質的な管理者・所有者について確認が必要になります。

 

生活費の残りを貯めた場合も注意が必要

専業主婦の配偶者名義の預金でよくあるのが、夫から生活費を受け取り、妻が家計をやりくりして残ったお金を自分名義の口座に貯めていたというケースです。

 

長年夫婦で生活していれば、このようなことは珍しくありません。

 

しかし、相続税の場面では、その預金が当然に妻の財産になるとは限りません

 

夫から渡された生活費は、通常の生活に必要な範囲で使われることを前提としています。国税庁は、夫婦や親子などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるものには贈与税がかからないと説明しています。ただし、生活費や教育費の名目で受け取ったお金を預金したり、株式や不動産などの購入資金に充てたりした場合には、贈与税がかかることになるとされています。

 

つまり、生活費として受け取ったお金を通常の生活費として使う分には問題になりにくい一方で、その一部が長期間にわたり預金として蓄積されている場合には、その預金が本当に妻に贈与されたものなのか、夫の財産を妻名義で管理していただけなのかが問題になります。

 

生活費の残りだから妻のもの」と単純に整理できるわけではありません。金額、期間、入金の経緯、管理状況、夫婦間の認識などを確認する必要があります。

 

配偶者名義の預金がすべて否認されるわけではない

ここまで読むと、専業主婦名義の預金はすべて相続財産に含めなければならないように感じるかもしれません。

 

しかし、そうではありません。

 

配偶者自身の財産であることを説明できる預金は、配偶者の固有財産として扱われます。たとえば、妻が独身時代に働いて貯めた預金、妻の親から相続した財産、贈与契約書や贈与税申告などにより贈与の事実を説明できる預金、妻自身の年金を原資とする預金などです。

 

また、預金の一部は妻固有の財産、一部は亡くなった方の財産と考えるべきケースもあります。

 

重要なのは、名義だけで判断しないことです。相続税申告の際には、配偶者名義の預金について、原資、管理、使用状況を確認し、相続財産に含めるべき金額がないかを検討する必要があります。

 

まとめ

相続税の税務調査では、亡くなった方本人名義の預貯金だけでなく、配偶者名義の預貯金についても確認されることがあります。

 

特に、配偶者が専業主婦であった場合、配偶者名義の預金がどのように形成されたのか、誰が管理していたのか贈与が成立していたのかが重要なポイントになります。

 

妻名義の通帳であっても、原資が夫の収入で、夫が管理し、妻が自由に使えない状態であれば、実質的には夫の財産と判断される可能性があります。一方で、妻自身の収入、相続、贈与などを原資とする預金であれば、妻の固有財産として説明できる場合もあります。

 

配偶者名義の預金は、長年の夫婦生活の中で自然に形成されることが多いものです。しかし、相続税の場面では、「誰の名義か」だけでなく、「誰の財産か」を客観的に説明できるかが重要になります。 次回は、夫から生活費を受け取って貯めた預金や、夫婦間贈与があったと主張する場合の注意点、相続税申告での確認方法、生前からできる対策について解説します。

 
 

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記事の著者

スタートアップサポート税理士法人代表者。
総合病院の勤務医のような存在よりも、個々の企業にとってのホームドクターのような存在でありたいと考えております。
日々の細かい会計処理のことから資金繰りや雇用、助成金、企業経営者にとって何でも気軽に相談できる良きパートナーとして専門的知識を生かしていきたい所存です。