2025.12.12 (金)
税務調査でよく聞かれる質問20選
目次
「税務調査が入る」——その連絡を受けた瞬間、多くの経営者は「何か指摘されるのではないか」「追徴課税を取られるのではないか」と不安を覚えるものです。会社を守る立場として、それは当然の心理かもしれません。
しかし、税務調査は国税通則法に基づいて行われる適正な行政手続きであり、決して粗探しや吊るし上げのために行われるものではありません。現場で調査官から矢継ぎ早に質問が投げかけられるため、準備不足だと焦ってしまうこともありますが、実はすべての質問には「明確な意図」があります。その意図さえ理解していれば、恐れることはありません。
本コラムでは、税務調査の現場で頻繁に聞かれる「質問20項目」を厳選し、「なぜその質問をするのか(調査官の狙い)」という視点で解説します。経営者や経理担当者の方々にとって、調査前の「虎の巻」としてお役立てください。
税務調査はどのように進むのか(一般的な流れ)
まずは敵を知る前に、調査のフィールド(流れ)を把握しましょう。通常の税務調査は「任意調査」が基本であり、映画のような突然の強制調査(マルサ)とは異なり、スケジュール調整の上で行われます。
- 事前通知:税務署から電話があり、調査日時・対象税目・対象年度(通常過去3期)が通知されます。
- 初回面談(ヒアリング):初日の午前中、経営者から事業内容や経理体制などを聞き取り、企業の全体像を確認します。実はここが最も重要な局面です。
- 帳簿・証憑の確認:午後から2日目にかけ、実際の帳簿と請求書・領収書・通帳などを突き合わせます。
- 追加質問・反面調査:必要に応じ、資料の追加提出や取引先銀行等への確認が行われます。
- 調査結果の説明:適正なら「是認」、誤りがあれば修正申告を勧められます。
この中で、経営者が最も緊張し、かつ調査官が情報を収集しようとするのが「初回面談」と「帳簿確認時の質問」です。ここでの回答が調査の深度を決定づけます。
税務調査でよく聞かれる質問20選(意図つき解説)
実際の調査現場で飛び交う質問の裏にある「調査官の意図」と「対応のポイント」を解説します。
【カテゴリー①:売上の計上時期と実在性】
税務署が最も目を光らせるのが「売上の計上漏れ」と、年度をまたぐ「期ズレ」です。
質問①:御社の事業内容と売上の流れ(受注〜納品〜入金)を教えてください。
【意図】売上計上基準の把握 その会社が「いつ売上を立てるべきか(出荷日か検収日か)」を見極めます。この「自社ルール」を経営者が明確に語れるかが最初のチェックポイントです。
質問②:主要取引先はどこですか? 特定先への依存度は高いですか?
【意図】架空取引・利益操作の確認 新規取引先や売上が急増している先、親族企業との取引は重点項目です。特定先に依存している場合、相手の決算に合わせて売上調整をしていないかも疑われます。
質問③:売上の計上基準(検収日・納品日・役務提供日等)はどうしていますか?
【意図】「期ズレ」の発見(最重要) 決算期末の売上が正しく当期に入っているかを確認します。「請求書の日付」ではなく、「モノやサービスを提供した日」で計上しているかが問われます。
質問④:現金売上はありますか? その管理方法はどうしていますか?
【意図】現金管理の杜撰さと「売上除外」の可能性 現金は銀行を通らないため、ポケットに入りやすい(売上除外)性質があります。金種表やレジ締め日報の有無が確認されます。
質問⑤:請求書の発行日・締め日はどのように決めていますか?
【意図】期間帰属の適正化 「20日締め翌月末払い」の場合、21日から月末までの「締後売上」が計上漏れしていないかは、必ずチェックされる基本論点です。
【カテゴリー②:人件費・役員報酬】
身内への支払いや役員報酬は、利益調整に使われやすいため厳しく見られます。
質問⑥:役員報酬はどのように決定していますか?
【意図】「定期同額給与」要件の確認 役員報酬は、期首から3ヶ月以内の決定や、毎月同額であることが条件です。利益が出そうだからと期中に増額したりしていないかを確認します。
質問⑦:従業員の給与管理はどうしていますか? 社会保険の加入状況は?
【意図】架空人件費の有無 タイムカードや出勤簿を確認し、勤務実態を見ます。特に「非常勤の親族」や「名前だけのアルバイト」がいないかは重点項目です。
【カテゴリー③:経費の業務関連性(公私混同の排除)】
「それは本当に会社の経費ですか?」という質問は、形を変えて何度も行われます。
質問⑧:交際費はどのように区分・管理していますか?
【意図】私的費用の混入防止 誰と何のために行ったかが不明確な領収書は否認リスクが高まります。休日の飲食や自宅近所での飲食は「家族利用ではないか」と疑われます。
質問⑨:車両費の按分(業務・私用の区分)はどうしていますか?
【意図】高級車等の私的利用チェック 社長専用車や家族が乗る車のガソリン代・保険料について、事業供用割合(家事按分)が適切か問われます。運行記録簿が強力な証拠となります。
質問⑩:個人名義の支払いを法人で処理していませんか?
【意図】経費の付け替え確認 社長個人のカード明細や自宅の光熱費などが法人経費に紛れ込んでいないか。これは「うっかり」であっても指摘される項目です。
【カテゴリー④:仕入・在庫・外注費】
利益操作の温床になりやすい在庫と外注費も必ずチェックされます。
質問⑪:外注・仕入の発注から支払までの流れを教えてください。
【意図】架空外注費の摘発 実態のないペーパーカンパニーへの支払いや、納品物がない架空取引は脱税の典型です。「成果物は何か」「契約書はあるか」で実態をあぶり出します。
質問⑫:在庫管理方法と棚卸のルールを教えてください。
【意図】在庫計上漏れによる利益圧縮の確認 期末在庫を少なく計上すれば利益(税金)が減ります。「棚卸表は誰が作成したか」「評価損を勝手に計上していないか」など、在庫の正確性は損益に直結します。
【カテゴリー⑤:資産・負債の管理】
B/S(貸借対照表)項目からも、経営の実態と不正の兆候を探ります。
質問⑬:固定資産の購入・廃棄はどのように管理していますか?
【意図】資本的支出と修繕費の区分、除却損の適正性 本来資産計上すべきものを「修繕費」として一括経費にしていないか、使っている機械を帳簿上だけ「廃棄」して損失を出していないかを確認します。
質問⑭:自宅兼事務所の場合、家事按分の根拠はありますか?
【意図】家賃・光熱費の過大経費化防止 面積比や使用時間比など、客観的な基準で按分されているかが問われます。「なんとなく50%」といった根拠のない計上は認められません。
質問⑮:借入金の使途は明確ですか?
【意図】使途不明金や役員貸付の発見 銀行からの借入金が、事業以外(社長個人の借金返済や投機)に使われていないか、利息計上が適正かを確認します。
質問⑯:法人と個人の預金・カードを区分していますか?
【意図】公私混同の温床チェック 法人通帳から個人への頻繁な資金移動や、法人カードでの個人的買い物は、経理全体の信頼性を損ないます。
【カテゴリー⑥:経理体制・コンプライアンス】
最後に、会社の管理能力そのものが問われます。
質問⑰:会計ソフトへの入力体制(入力者・チェック者)はどうなっていますか?
【意図】内部統制の信頼性確認 誰が入力し承認しているか。ずさんな体制であれば、調査官は「帳簿を信用せず、原始証憑まで全て確認する」という判断をします。
質問⑱:電子データ(PDF・メール)の保存はどのように行っていますか?
【意図】電子帳簿保存法への対応状況 Amazonの購入履歴やメール請求書を、データのまま検索可能な状態で保存しているか(電帳法要件)が問われます。
質問⑲:役員・家族に対する貸付金の有無と内容を教えてください。
【意図】認定利息・認定賞与の課税 会社が役員にお金を貸している場合、適正な利息を徴収していないと、その分が給与とみなされ課税されるリスクがあります。
質問⑳:税務署へ提出した届出書(消費税等)は把握していますか?
【意図】選択適用要件の遵守 簡易課税やインボイス登録など、提出した届出と実際の処理が一致しているか。形式的ながら影響額が大きい部分です。

質問の意図を理解すると、税務調査の見え方が変わる
これら20の質問を通じて、税務調査官の視点は大きく以下の3点に集約されます。
- 「帳簿の正確性(特に期間帰属)」 売上や経費が正しい年度に計上されているか。「期ズレ」は最も時間をかけて調査されます。
- 「取引の実在性」 架空の人件費や外注費など、「ないものをあるように見せる」処理には厳しい目が向けられます。
- 「業務関連性(公私混同の排除)」 その支出は会社の利益獲得のために必要か。個人的な支出(家事費)が紛れ込んでいないかという視点です。
この3つの「レンズ」を通して自社の決算書を見たとき、説明がつかない箇所がなければ、調査はスムーズに進みます。
調査に備えるための日常整備
税務調査は「通知が来てから慌てて準備するもの」ではありません。日頃の経理処理が整っていれば、調査は単なる「答え合わせ」の場になります。どの企業にも共通する5つの準備ポイントを整理しました。
- 売上計上基準を明確にし、証憑と整合させる 納品書や検収書など、売上計上時期を客観的に証明する書類を必ず残しましょう。
- 領収書・請求書・契約書の保存ルールを徹底する 「証憑なくして経費なし」が鉄則です。紛失を防ぐため、月ごとのファイリングやクラウド保存を徹底しましょう。
- 法人と個人の区分を徹底する(最重要) 法人のカードで個人の買い物をしない、家族旅行の領収書を入れない。これらを徹底するだけで、調査官の心証は劇的に良くなります。
- 内部チェック体制の整備 「担当者が入力し、社長が確認する」というダブルチェック体制を作りましょう。ミス防止だけでなく、不正リスクの低減にもつながります。
- 電子データ保存のルール化(電帳法・インボイス対応) メール請求書の保存やインボイス要件の確認など、法対応を日常業務フローに組み込むことが、将来のリスクを減らします。
まとめ:質問の背景がわかれば、税務調査は「準備できる」
税務調査において、調査官は決して「意地悪な質問」をしているわけではなく、「適正な課税」のために必要な事実確認を行っているに過ぎません。
今回解説した20の質問の意図を理解していれば、調査官が「何を知りたがっているのか」を察知し、的確な資料提示と説明ができるはずです。
- 「証憑(事実の証明)」を整える
- 「基準(自社のルール)」を一貫させる
- 「公私(法人と個人)」を分ける
この3つを日々の経営で意識してください。そうすれば、税務調査は恐るるに足りず、むしろ自社の管理体制の健全性を証明する良い機会となるでしょう。不安な点があれば、顧問税理士と連携し、模擬調査を行うなどして万全の体制を整えておくことをお勧めします。

税務調査に関して不明な点があれば、弊所までお気軽にお尋ねください。
TEL:0586-48-5507
FAX:0586-64-6644
コラムの内容は、国税庁等の公式見解を示すものではありません。詳細は顧問税理士にご相談ください。当コラムの活用において生じた損害の一切の責任は負いかねます。