2024.05.14 (火)
【法人向け】税務調査の入られやすい時期・手順などの重要事項をまとめて解説します。
目次
法人の経営者や経理担当にとって、例え申告内容に問題が無いにしてもいつかやってくる税務調査は気になるものです。
少なくとも税務調査の入る時期の傾向が分れば心の準備ができますが、実は法人の税務調査には一定の法則が存在しています。
本記事では、法人の税務調査が入りやすい時期・手順や、税務署都合が調査に及ぼす影響について詳しく解説します。
税務署の事務年度と法人調査の関係
法人だけではなく国にも年度というものがあるように、税務署にも「事務年度」があり、税務調査も事務年度に沿った流れの中で実施されています。
つまり、税務署の事務年度を理解することで税務調査がいつ実施されるのか、ある程度までは予想できるわけです。 絶対とまでは言い切れないまでも、年度の中でどのように法人調査が実施されるのか考えてみましょう。
税務署の事務年度とは?
国の会計年度は4月に始まり翌年3月末をもって終えますが、税務署の事務は7月1日~翌年6月30日を1事務年度としています。
法人も決算月の年度末へむけて終わらせるべき仕事をまとめていきますが、税務署も6月末へ向け同じようなことをしているわけです。
とくに法人の税務調査を担当する法人課税部門においては、事務年度に合わせたスケジュールで動いているので、調査の時期が読みやすいと言えるでしょう。
基本的に事務年度末の6月は、調査着手中の事案の手仕舞いや年度中の調査成績の調整に追われる時期です。 そのような事情を勘案すると、7月1日以降の新年度の調査がフレッシュで危険なことがイメージできるでしょう。
新年度開始と税務調査の着手
税務署の定期異動の辞令交付は7月10日で、新たに決まったメンバーで法人調査を開始することになります。
ただ、税務署も年度替わりで止まるわけにいかないので、新年度最初の調査は旧年度中に調査予告された案件、つまり旧メンバーが手配したものから着手します。
新年度から調査を開始するのは2月~5月決算法人が対象となり、調査部門に渡される決算データの時期を考えると現実的には2月、3月決算法人から調査が始まります。
税務署の事務年度を前後半に分けると、(内部の運用ルールによれば)以下のとおり調査されると言われています。
- 7月~12月 ・・・ 2月~5月決算法人が調査対象
- 1月~6月 ・・・ 6月~1月決算法人が調査対象
あくまで税務署の原則に沿った調査時期ですが、これと違った時期の調査があるとすれば、税務署側が重要な資料を入手していて重要案件と位置付けられている可能性があります。 とはいえ、この原則から分かるように確率論的に考えれば、6月~1月決算法人のほうが調査される可能性が低くなります。
調査時期と税務調査官の人事評価
法人調査には傾向があったとしても、一年中調査の可能性は否定できません。そうはいっても税務署としても都合があるので、8月のお盆過ぎから11月中旬が法人の税務調査最盛期となります。
これは事務年度の始まりが7月であるという点と、税務調査のクロージングが必要だからです。
通常、法人の税務調査は2日程度の実地調査を行い、1~2ヶ月ほどで結果が通知されます。
つまり12月に実地調査をしていると年を越す可能性が出てくるので、実地調査は11月中頃までが一つのピークになるのです。
また、これは完全に税務署サイドの話ですが、この上期の調査結果は税務調査官の人事評価に直接関わるもので、それだけ調査にハッスルする時期だといえます。
こう聞くと、この時期に税務調査を受ける法人は「税務調査官の出世の養分にされる」イメージを持たれるかもしれません。
しかし、税務調査官とはいえ一介の公務員なので、評価されることは重要なことなのです。
日程がきつくなる年度後半
税務署の法人課税部門が税務調査に力を入れる上期が終わり、1月以降の下期に入ると6月決算以降の法人が調査対象となります。
しかし年が明けて間もなくすると、個人所得の「確定申告」の時期になり、税務署もそちらへ人手が取られてしまい、3月末までの法人調査は手薄になります。
そんな時期も終われば6月の年度末が見えてくるわけで、調査を手仕舞いするクロージングのことを計算すると上期ほどの余裕がないことが分かるでしょう。
顧問税理士がいると有利な理由
法人の税務調査では、よほどのことがない限り実地調査を行わない時期があり、これは個人の確定申告時期と重なる2月中旬から3月下旬です。
これは税理士の繁忙期とも重なる時期で、国税庁サイドと税理士会側の暗黙の了解ともいえるものなので、顧問税理士のいない法人は別の扱いとなります。
先ほど「よほどのこと」と書きましたが、これは査察事案や重大な資料がある場合のことで、さすがにそのような事情だと税務調査は避けられません。
税務調査について考えておくべき事実
一年の中の時期や法人の決算月による税務調査の傾向は理解できたと思いますが、実際に税務調査の連絡が来た場合の対処方法や、調査時に考えておくべきポイントはどこにあるのでしょうか。
ここでは要点をまとめて、最低限押さえておくべきポイントを説明します。
調査連絡を受けたときの対処方法
一般的に税務調査と認識されているものは、納税者の協力によって成り立っている「任意調査」と言われるもので、事前に調査以来の連絡が来るところから始まります。
任意調査とはいっても実際には断れないものなので、顧問税理士と相談のうえ実地調査の日程を調整することになるでしょう。
法人事業者で顧問税理士がいない場合は、調査官に押し切られて無駄な追徴課税を受けやすいので、全力をあげて協力してくれる税理士を探す、あるいは紹介してもらうべきです。
令和4事務年度における法人税実地調査の件数は約6万2千件となっており、追徴課税額も3,225億円と、いずれも前事務年度を大幅に上回っています。 税務署からの「簡易な接触(書面や電話による連絡や来署依頼による面接)」も増加しているので、事後の対処で慌てる前に頼れる税理士探しをすることが一番の対策です。
調査官が避けたい「長期仕掛事案」
先ほど説明した「税務調査官によるクロージング」とは、実地調査を終えたあと必要な補完調査を実施し、さらに税務調査の結果を決議書という形で、税務署長などの幹部職員へ報告することを言います。
ここまでの期間が3ヶ月を超えてしまうと、長期仕掛事案として署内の幹部にたいして「争点整理表」を提出して説明することが求められます。
税務調査官としては、これが面倒な作業になるので3ヶ月以内にクロージングしたいのが本音です。
調査に強い顧問税理士へ依頼することで、この辺りの兼合いも上手く利用して、無駄な追徴課税を避けることができます。
ただ、まかり間違っても調査を受けている法人側から、このような挑発ともとられる言動は取らないようにしましょう。
今後数年に関しては、税務調査においてインボイスの不備を強く追及されることはないでしょう。 ただ、消費税の還付申告など重点調査対象の場合だけは注意が必要です。
まとめ
法人調査を実施する税務署の事務年度など相手の都合を読み解くことで、ある程度まで調査が実施されそうな時期が予想できることが理解できたと思います。
結論としては、税務調査官がやる気満点な8月~11月に調査を受ける可能性が高い、2~5月決算法人はリスキーです。
税務調査を受けたからといって必ず追徴課税されるわけではありませんが、油断せずに準備することをオススメします。
税務調査に関して不明な点があれば、弊所までお気軽にお尋ねください。
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