2026.04.27 (月)
税務調査で嘘はなぜわかる?帳簿だけでは終わらない調査の実態
目次
税務調査で最も避けるべき対応の一つが、事実と異なる説明をしてしまうことです。
調査官から突然質問を受けると、ついその場を取り繕うように「そのような売上はありません」「この支払いは間違いなく経費です」「資料は残っていません」などと答えてしまうことがあります。
しかし、税務調査は、会社や個人事業主が作成した帳簿だけを見て終わるものではありません。必要に応じて、通帳、請求書、領収書、契約書、レジデータ、業務日報、メール、チャット、取引先の資料など、さまざまな情報が確認されます。
さらに、税務署が必要と判断した場合には、取引先や金融機関などに対して確認が行われることもあります。これを一般に「反面調査」といいます。
つまり、税務調査では、自社の説明だけで完結するわけではありません。自社の帳簿や資料と、取引先側の帳簿、金融機関の記録、周辺資料とが突き合わされます。そのため、その場しのぎの説明や事実と異なる回答は、後から矛盾として表面化する可能性が高いのです。
今回は、全2回の第1回として、税務調査で嘘がなぜわかるのか、どのような点から矛盾が見つかるのかを解説します。
税務調査では「申告書だけ」を見るわけではない
税務調査というと、申告書や決算書、総勘定元帳だけを確認されるイメージを持たれる方も多いかもしれません。
もちろん、これらの資料は税務調査の基本となります。しかし、実際の調査では、それだけでは終わりません。 たとえば、売上について確認する場合には、請求書、納品書、契約書、通帳の入金履歴、レジデータ、予約表、日報、メールのやり取りなどが確認されることがあります。
経費についても同様です。領収書があるかどうかだけではなく、その支出が本当に事業に関係しているのか、金額が妥当か、実際に物やサービスの提供があったのかまで確認されます。
税務調査では、一つの資料だけで判断されるわけではありません。帳簿、通帳、請求書、契約書、取引先資料、金融機関資料などを突き合わせ、全体として整合しているかが見られます。
そのため、「帳簿上はそのように処理している」というだけでは説明として不十分な場合があります。帳簿処理の背景にある実際の取引内容を、資料に基づいて説明できるかどうかが重要です。
お金の流れは通帳や金融機関資料に残る
税務調査で特に確認されやすいのが、預金口座の動きです。
法人であれば会社名義の口座、個人事業主であれば事業用口座が確認されます。また、必要に応じて、代表者個人の口座や親族名義の口座の動きが確認されることもあります。
たとえば、帳簿には売上として計上されていない入金がある場合、その入金が何の入金なのか説明を求められることがあります。
「これは借入金です」
「これは立替金の精算です」
「これは個人的なお金です」
と説明したとしても、その説明を裏付ける契約書、振込記録、相手先とのやり取り、返済状況などが確認されます。
また、現金で受け取った売上であっても、その後に預金口座へ入金されていれば、通帳に記録が残ります。現金のまま使っていたとしても、仕入や経費、生活費との関係から、資金の流れに不自然さがないか確認されることがあります。
税務調査では、「現金だからわからない」「通帳に入れていないから見つからない」という考え方は非常に危険です。
お金の流れは、通帳、領収書、請求書、取引先資料、生活費の支出状況など、さまざまな形で残ります。

売上漏れは取引先側の資料から見つかることがある
売上漏れは、税務調査で特に問題になりやすい項目です。
自社の帳簿から売上を外していたとしても、取引先側では外注費、仕入、業務委託費、支払手数料などとして経費計上されていることがあります。
たとえば、自社では売上を計上していなくても、取引先側に次のような資料が残っていれば、取引の存在が確認されます。
請求書、納品書、支払明細、振込記録、契約書、発注書、メール、チャット、成果物、検収記録などです。
このような資料が取引先側に残っていれば、自社だけで売上をなかったことにすることはできません。
特に、法人間取引や継続的な取引では、相手先にも会計処理が存在します。こちら側では帳簿から除外していても、相手先の帳簿には支払記録が残っているため、照合されれば矛盾が明らかになります。
税務調査では、「自社の帳簿だけを直せば大丈夫」という考えは通用しません。取引は相手があるものです。自社と相手先の両方に記録が残るため、一方だけを都合よく変えても整合性が取れなくなります。
経費は「領収書があるか」だけでは判断されない
経費についても、税務調査ではよく確認されます。
特に、外注費、修繕費、旅費交通費、接待交際費、広告宣伝費、消耗品費、車両費、地代家賃、親族への給与や外注費などは、事業との関連性や金額の妥当性が確認されやすい項目です。
ここで注意したいのは、領収書があるだけで経費として認められるわけではないという点です。
税務上、経費として処理するためには、その支出が事業に関連していること、業務上必要なものであることを説明できる必要があります。
たとえば、飲食代であれば、誰と、何の目的で、どのような打ち合わせをしたのかが確認されます。旅費交通費であれば、訪問先、出張目的、日程、移動経路、業務との関係が確認されます。車両費であれば、その車がどの程度事業に使われているのか、私用部分がないかが見られます。
つまり、税務調査では、支出の形式だけではなく、実態が確認されます。
「領収書があるから大丈夫」と考えるのではなく、「なぜその支出が事業に必要だったのか」を説明できる状態にしておくことが大切です。
説明の矛盾は調査官に記録される
税務調査では、調査官からさまざまな質問を受けます。
このとき、記憶が曖昧なまま適当に答えてしまうと、後から資料と食い違うことがあります。
たとえば、最初に「現金売上はありません」と説明した後で、レジデータや予約表、取引先資料から現金売上の存在が確認された場合、単なる計上漏れではなく、意図的に隠したのではないかと見られる可能性があります。
また、「この外注先は実際に作業しています」と説明したものの、外注先に確認したところ作業実態が不明確であった場合、説明の信用性が低くなります。
税務調査では、回答内容も重要です。調査官は、誰が、いつ、どのように説明したのかを確認しながら調査を進めます。
そのため、わからないことを無理に即答する必要はありません。
記憶が曖昧な場合には、
「資料を確認してから回答します」
「当時の担当者に確認して、改めてご説明します」
「通帳や請求書を確認したうえで回答します」
と伝える方が安全です。
不確かな記憶で断定的に答えてしまうと、後から資料と食い違った際に、虚偽の説明と受け取られるおそれがあります。
嘘が発覚した場合のリスク
税務調査で申告漏れが見つかれば、本来納めるべき税金に加えて、延滞税や加算税が発生する可能性があります。
特に問題となるのが、隠ぺい又は仮装があったと判断される場合です。
単なる計算ミスや資料不足による誤りではなく、売上を意図的に除外していた、架空の請求書を作成していた、事実と異なる説明をしていた、資料を改ざんしていた、といった事情がある場合には、重加算税の対象となる可能性があります。
税務調査では、誤りがあったこと自体も問題ですが、それ以上に「隠そうとしたかどうか」が重く見られます。
また、税務上の負担だけでなく、会社の信用にも影響します。調査が長期化すれば、本業への負担も大きくなります。さらに、取引先や金融機関に確認が入れば、経理管理体制に不安を持たれる可能性もあります。
税務調査での対応は、単なる税金の問題にとどまりません。会社の信用、取引先との関係、金融機関からの評価にも関わる重要な問題です。
税務調査では「隠す」より「説明できる状態」が大切
税務調査で大切なのは、嘘をついて調査を乗り切ろうとすることではありません。
大切なのは、事実を整理し、資料に基づいて説明できる状態にしておくことです。
売上であれば、請求書、納品書、入金記録、契約書などを整理しておく。経費であれば、領収書だけでなく、業務との関係、支出の目的、成果物、作業記録などを説明できるようにしておく。預金の入出金であれば、その内容を後から確認できるようにしておく。
このような準備ができていれば、税務調査でも落ち着いて対応することができます。
反対に、資料がない、説明が変わる、記憶だけで回答する、事実と異なる説明をするといった対応は、調査官の疑いを深める原因になります。
まとめ
税務調査では、申告書や帳簿だけでなく、通帳、請求書、領収書、契約書、レジデータ、日報、メール、取引先資料など、さまざまな情報が確認されます。
そのため、その場しのぎの説明や事実と異なる回答は、後から矛盾として表面化する可能性があります。
税務調査で大切なのは、嘘をつくことではなく、事実を整理し、資料に基づいて誠実に説明することです。
次回は、税務調査で特に重要となる「反面調査」について、外注費、修繕費、商品取引、制作費・広告宣伝費などを例に、実務上どこまで確認されるのかを詳しく解説します。

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