2026.05.22 (金)

税務調査で売上除外を疑われる会社とは?現金売上・個人口座入金に注意

税務調査というと、「経費が認められるかどうか」を心配される方が多いかもしれません。
もちろん経費の内容も確認されますが、税務調査で特に重要視される項目の一つが売上です。

 

なぜなら、売上が正しく計上されていない場合、法人税や所得税だけでなく、消費税にも影響するためです。
売上の計上漏れがあると、利益が少なく申告されることになり、結果として納税額も少なくなってしまいます。

 

そのため税務調査では、単に会計帳簿に記載されている売上だけを見るのではなく、請求書、領収書、通帳、売上日報、レジ資料、予約表、契約書などを照合しながら、売上の発生から入金までの流れに不自然な点がないか確認されることがあります。

 

法人は、帳簿を備え付けて取引を記録し、帳簿や取引に関して作成・受領した書類を、原則として確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存する必要があります。国税庁の資料でも、保存すべき帳簿の例として総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛金元帳、売上帳などが挙げられています。

   

売上除外とは何か

「売上除外」とは、実務上、本来は売上として計上すべき取引が、帳簿や申告書に反映されていない状態をいいます。

 

たとえば、次のようなケースです。

 
  • 現金で受け取った売上の一部を帳簿に入れていない。
  • 会社の売上を社長個人の口座で受け取っている。
  • 請求書を発行しているのに、会計上の売上に計上していない。
  • 商品を引き渡している、またはサービス提供が終わっているにもかかわらず、入金が翌期だからという理由で翌期の売上にしている。
  • 領収書控えや売上伝票を保存していない。
  • 一部の取引だけを帳簿に載せていない。
 

もちろん、最初から意図的に売上を隠しているケースだけではありません。
経理処理のルールがあいまいだったり、売上資料の保存が不十分だったりすることで、結果として「売上が漏れているのではないか」と疑われる場合もあります。

 

たとえば、

 
  • 社長だけが売上を把握しており、担当者が請求書や入金状況を確認できない会社。
  • 現金売上を毎日記録せず、月末にまとめて概算で処理している会社。
  • 請求書と通帳入金の照合をしていない会社。
 

このような場合、実際には売上を隠していなかったとしても、税務調査の場では説明に時間がかかることがあります。

 

税務調査で大切なのは、「売上を正しく申告している」ということだけではありません。
それを資料に基づいて説明できる状態にしておくことが重要です。

 

現金売上が多い会社は特に注意

売上除外を疑われやすい業種として、まず挙げられるのが現金売上の多い業種です。

 

たとえば、飲食店、美容室、理容室、小売店、整体院、接骨院、エステサロン、学習塾、駐車場業、イベント販売、現金回収がある建設業や職人業などです。

 

現金売上は、銀行振込と違い、通帳に自動的に記録が残るわけではありません。
そのため、日々の売上記録や現金管理が不十分だと、税務調査で確認されやすくなります。

 

税務調査では、次のような資料が確認されることがあります。

 
  • レジ締め資料
  • 売上日報
  • 予約表
  • 領収書控え
  • 現金出納帳
  • 通帳への入金状況
  • POSデータ
  • クレジットカード決済や電子決済の明細
  • 売上管理アプリのデータ
 

たとえば、

 
  • 予約表には多くのお客様の名前があるのに、売上日報の金額が少ない。
  • レジ資料と会計帳簿の売上金額が一致しない。
  • 現金売上があるはずなのに、現金出納帳が作成されていない。
  • 領収書の控えが連番で保存されていない。
 

このような状態だと、売上の一部が帳簿に反映されていないのではないかと確認される可能性があります。

 

消費税においても、帳簿には取引年月日、取引内容、税率ごとに区分した金額、取引の相手方の氏名または名称など、一定の事項を記載することが求められています。なお、小売業や飲食店業など不特定多数を相手にする事業では、一定の場合に相手方の氏名等の記載を省略できる取扱いがありますが、日々の売上管理そのものが不要になるわけではありません。

 

現金売上がある会社では、「今日いくら売上があり、その現金がどのように管理され、いつ会社口座に入金されたのか」を説明できる状態にしておくことが大切です。

 
 

社長個人の口座に売上が入っているケース

次に注意したいのが、会社の売上が社長個人の口座家族名義の口座に入金されているケースです。
これは、税務調査で非常に確認されやすいポイントです。

 

たとえば、

 
  • 創業当初に個人口座で事業を始め、そのまま取引先に口座変更を伝えていなかった。
  • ネット販売や決済サービスの入金先が個人口座のままになっていた。
  • 不動産収入、副業収入、事業収入が同じ個人口座に入っていた。
  • 会社設立後も、一部の取引先だけが社長個人口座へ振り込んでいた。
 

このようなケースは、実務上珍しくありません。

 

しかし、税務調査では、次のような点を確認される可能性があります。

 
  • なぜ会社の売上が会社名義の口座に入っていないのか。
  • その入金は会社の売上として帳簿に反映されているのか。
  • 個人口座に入った後、そのお金は会社に戻されているのか。
  • 社長個人のお金と会社のお金が混在していないか。
 

会社の売上であるにもかかわらず、個人口座に入金され、そのまま個人の生活費などに使われている場合、会社の売上計上漏れ、社長への貸付金、役員報酬、役員賞与など、複数の税務上の問題に発展する可能性があります。

 

もちろん、個人口座に入金されたこと自体が直ちに売上除外になるわけではありません。

 

大切なのは、その入金の内容を説明できること、そして会社の売上であれば会社の帳簿に正しく反映されていることです。

 

できる限り、会社の売上は会社名義の口座で受け取る体制にしておくべきです。
やむを得ず個人口座に入金された場合でも、入金内容を明確にし、会社売上として処理した記録を残しておく必要があります。

 

請求書と入金額が合わない会社

請求書と通帳入金の金額が合わない会社も、税務調査で確認されやすい傾向があります。

 

もちろん、請求額と入金額が違うこと自体がすぐに問題になるわけではありません。

 

実務上は、振込手数料が差し引かれていたり、値引きがあったり、一部入金や分割入金になっていたりすることがあります。
また、複数の請求分がまとめて入金されることもあります。

 

問題は、その差額の理由を説明できない場合です。

 

たとえば、請求書は100万円で発行しているのに、通帳には90万円しか入金されていない。
その10万円について、値引きなのか、振込手数料なのか、未回収なのか、別口座に入金されたのかが分からない。

 

このような状態だと、売上の一部が除外されているのではないかと確認される可能性があります。

 

また、請求書は存在するのに、会計帳簿に売上として計上されていないケースも注意が必要です。

 

特に、請求書をExcelや販売管理ソフトで作成し、会計ソフトには別途手入力している会社では、請求データと会計データが一致しているかを定期的に確認する必要があります。

 

売上管理で大切なのは、請求書、売掛金台帳、通帳入金、会計帳簿がつながっていることです。

 

金額が一致しない場合でも、その理由が資料で説明できれば大きな問題にならないこともあります。

反対に、資料が残っていない場合には、正しく処理していたとしても説明が難しくなります。

 

売上を隠していなくても「疑われる状態」は避けるべき

税務調査で大切なのは、実際に売上除外をしているかどうかだけではありません。
売上除外を疑われやすい状態を作らないことも重要です。

 
  • 現金売上の記録がない。
  • 個人口座に事業収入が入っている。
  • 請求書と入金額の差額が説明できない。
  • 領収書控えや売上日報を保存していない。
  • 売掛金の管理があいまい。
 

こうした状態が重なると、調査官から見たときに「売上が漏れているのではないか」と確認されやすくなります。

 

税務調査は、何も問題がないことを口頭で説明するだけでは不十分です。
日々の資料、帳簿、通帳、請求書などをもとに、売上の流れを客観的に説明できる状態にしておくことが大切です。

 

まとめ

売上管理は、税務調査のためだけに行うものではありません。

会社の利益を正しく把握し、資金繰りを管理し、経営判断を行うためにも欠かせないものです。

 

次回は、税務調査で特に確認されやすい決算日前後の売上計上漏れ・期ズレ、売上除外と判断された場合のリスク、そして日頃から行うべき対策について解説します。

 
 

税務調査に関して不明な点があれば、弊所までお気軽にお尋ねください。

 

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コラムの内容は、国税庁等の公式見解を示すものではありません。詳細は顧問税理士にご相談ください。当コラムの活用において生じた損害の一切の責任は負いかねます。

記事の著者

スタートアップサポート税理士法人代表者。
総合病院の勤務医のような存在よりも、個々の企業にとってのホームドクターのような存在でありたいと考えております。
日々の細かい会計処理のことから資金繰りや雇用、助成金、企業経営者にとって何でも気軽に相談できる良きパートナーとして専門的知識を生かしていきたい所存です。