2026.05.29 (金)
税務調査で売上除外を疑われないために。期ズレ・資料不足・日頃の管理に注意
目次
前回は、税務調査で売上除外を疑われやすい会社の特徴として、現金売上、個人口座入金、請求書と入金額のズレについて解説しました。
今回は、もう一つ重要なポイントである決算日前後の売上計上漏れ・期ズレについて取り上げます。
また、売上除外と判断された場合にどのようなリスクがあるのか、日頃からどのような対策をしておくべきかについても解説します。
決算日前後の売上は特に確認されやすい
税務調査では、決算日前後の売上が正しい時期に計上されているかを確認されることがあります。
たとえば、3月決算法人の場合、
- 3月中に商品を納品しているのに、入金が4月だったため翌期の売上にしている。
- 3月中に工事が完了しているのに、請求書を4月に発行したため翌期の売上にしている。
- 3月中にサービス提供が終わっているのに、入金日を基準に4月売上として処理している。
このような処理は、税務調査で確認されやすいポイントです。
売上は、単純に「入金された日」だけで判断するものではありません。
商品を販売する取引、請負工事、役務提供、継続的なサービスなど、取引の内容によって売上を計上すべき時期を検討する必要があります。
法人税基本通達では、役務提供について、履行義務が一定期間にわたり充足されるものは、その履行に着手した日から引渡し等の日までの期間において収益を認識する旨が示されています。また、履行義務が一時点で充足されるものについては、引渡し等の日が役務提供の日に該当し、その日の属する事業年度の益金に算入される旨が示されています。
さらに、請負についても、原則として引渡し等の日の属する事業年度の益金に算入することが示されており、建設工事等については、作業を結了した日、相手方の検収完了日、使用収益ができることとなった日など、契約内容や工事の性質に応じて合理的な日を継続して用いることが求められます。
つまり、入金日や請求書発行日だけで売上時期を決めてしまうと、期ズレが生じる可能性があります。
期ズレは「単なる処理ミス」では済まないこともある
決算日前後の売上計上漏れは、会社側からすると「少し時期がずれただけ」と感じるかもしれません。
しかし、税務上は、その事業年度の利益や税額に影響します。
特に、決算月の売上を翌期にずらしているように見える場合、税務調査では慎重に確認されることがあります。
たとえば、
- 毎年3月に売上が少なく、4月に大きな売上が計上されている。
- 決算月だけ請求書の発行が遅れている。
- 納品書や作業完了報告書の日付は決算前なのに、売上計上は翌期になっている。
このような場合、意図的に売上を翌期へ繰り延べているのではないかと確認される可能性があります。
もちろん、実務上、請求書の発行が遅れることや、検収のタイミングが翌期になることはあります。
問題は、その理由を説明できる資料があるかどうかです。
工事であれば、契約書、注文書、工事台帳、作業日報、検収書、引渡書、写真、請求書など。
サービス業であれば、契約書、業務完了報告書、作業記録、メールのやり取り、請求書など。
物販であれば、注文書、納品書、出荷記録、受領書、請求書など。
これらの資料が残っていれば、売上計上時期を説明しやすくなります。
反対に、資料が残っていない場合には、「本当に翌期の売上でよいのか」を説明することが難しくなります。

売上除外を疑われやすい会社のチェックリスト
次のような会社は、税務調査で売上について確認されやすくなる可能性があります。
- 現金売上の記録を日々残していない。
- レジ締め資料や売上日報を保存していない。
- 社長だけが売上を管理している。
- 会社の売上が個人口座に入金されている。
- 請求書と通帳入金の照合をしていない。
- 売掛金残高の管理があいまい。
- 決算日前後の売上計上ルールが決まっていない。
- 納品書、検収書、作業完了報告書などを保存していない。
- 値引き、返品、キャンセルの記録が残っていない。
- 販売管理ソフトと会計ソフトの金額が一致しているか確認していない。
これらに一つでも該当すれば直ちに問題というわけではありません。
しかし、該当項目が多いほど、売上の流れを説明しにくくなります。
税務調査で重要なのは、売上の発生、請求、入金、会計処理までの流れがつながっていることです。
「請求書はあるが会計に入っていない」
「通帳に入金はあるが、何の売上か分からない」
「売上日報はあるが、現金出納帳と合わない」
このような状態を放置していると、調査時に説明が難しくなります。
売上除外と判断された場合のリスク
もし税務調査で売上計上漏れが確認された場合、法人税、所得税、消費税などについて追加納税が発生する可能性があります。
さらに、申告内容に誤りがあった場合には、加算税や延滞税の対象となることがあります。
特に、単なるミスではなく、事実を隠したり、帳簿を改ざんしたり、二重帳簿を作成したりしていた場合には、重加算税の対象となる可能性があります。
国税庁の事務運営指針では、隠蔽または仮装に該当する例として、いわゆる二重帳簿の作成、帳簿書類の破棄・隠匿、帳簿書類の改ざん、虚偽記載、相手方との通謀による虚偽の証ひょう書類の作成、意図的な集計違算などが示されています。
つまり、売上計上漏れがあった場合でも、単なる入力ミスなのか、資料不足による誤りなのか、意図的な売上除外なのかによって、税務上の評価は大きく変わります。
だからこそ、日頃から資料を残し、説明できる状態にしておくことが重要です。
売上除外を疑われないために行うべき対策
売上除外を疑われないためには、特別なことをする必要はありません。
大切なのは、日々の売上管理を丁寧に行い、資料を残すことです。
まず、売上の発生から入金までの流れを整理しましょう。
誰が売上を確認し、誰が請求書を発行し、誰が入金を確認し、誰が会計に反映するのか。
この流れが社内であいまいな場合、売上漏れや二重計上、入金消込漏れが起きやすくなります。
現金売上がある場合は、毎日の売上記録を残すことが大切です。
レジ締め資料、売上日報、予約表、領収書控え、現金出納帳などを保存し、現金残高と帳簿が合っているか確認しましょう。
請求取引がある場合は、請求書と通帳入金の照合を毎月行うことが重要です。
入金額が請求額と異なる場合には、振込手数料、値引き、一部入金、相殺、返品など、差額の理由を記録しておきます。
また、個人口座への入金はできる限り避けるべきです。
会社の売上は会社名義の口座で受け取ることを基本とし、やむを得ず個人口座に入金された場合には、内容を明確にして会社の売上として処理する必要があります。
決算日前後の売上については、特に注意が必要です。
納品日、作業完了日、検収日、引渡日、請求書発行日、入金日を確認し、どの時点で売上計上すべきかを整理しておきましょう。
毎期継続したルールで処理することも大切です。
売上管理は税務調査対策だけではない
売上管理を整えることは、税務調査対策だけが目的ではありません。
売上が正しく把握できていなければ、会社の利益も正しく把握できません。
売掛金の回収状況が分からなければ、資金繰りにも影響します。
どの商品、どの取引先、どの現場で利益が出ているのかも見えにくくなります。
つまり、売上管理は、税務上のリスクを下げるだけでなく、会社の経営管理そのものに直結します。
税務調査で慌てない会社は、日頃から資料が整理されています。
請求書、通帳、売掛金台帳、売上日報、契約書、納品書、検収書などがそろっており、売上の流れを説明できる状態になっています。
反対に、税務調査が入ってから資料を探し始める会社は、説明に時間がかかり、不要な疑念を招くことがあります。
まとめ
税務調査では、売上が正しく計上されているかが重点的に確認されます。
特に、現金売上が多い会社、個人口座に事業収入が入っている会社、請求書と入金額の照合ができていない会社、決算日前後の売上処理があいまいな会社は注意が必要です。
売上を隠していなかったとしても、資料が不足していたり、処理ルールがあいまいだったりすると、結果として売上除外を疑われることがあります。
大切なのは、日々の売上、請求、入金、会計処理の流れを整理し、資料に基づいて説明できる状態にしておくことです。
売上管理に不安がある場合や、税務調査で指摘されない体制を整えたい場合は、早めに税理士へ相談することをおすすめします。
日頃の管理体制を整えておくことが、税務調査への一番の備えになります。

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