2025.03.27 (木)
帳簿・領収書は大丈夫?税務調査でチェックされやすい書類について税理士が解説します

目次
税務署の調査を受けるということは、悪意のある確定申告をしていなくても嫌なイメージを持つものです。特に税務調査の経験がなければ何から準備していいのか分からず、どこを見られるのか不安になると思います。この記事では、税務調査においてチェックされるポイントを押さえ、確認される帳簿や領収書について税理士が詳しく解説します。
税務調査の種類と実施内容を確認
一般的に税務調査として知られているものは、税務署から調査官が会社に訪れ行われる「実地調査」というもので、多くの場合3日間程度実施されます。
税務調査と聞けば「税務署から疑われているのか?」と思ってしまうものですが、実際にはそれだけではない点に留意が必要です。
まずは税務署が実施している調査の種類と、行われている内容について確認しましょう。
税務調査の目的と受ける場合の心構え
日本における個人事業者の納める所得税や法人が納める法人税は、納税者自らが、税務署へ所得などの申告を行うことにより税額を確定させ、この確定した税額を納税者が自ら納付する申告納税制度が取られています。
税務調査が行われる目的は、企業や個人事業主が提出した申告書や決算書に基づき、収入や経費の計上が適正に行われているか確認するためのものです。
あくまで申告内容が正しいかの確認であり、建前上予め罰則を科すために行われるものではありません。
つまりミスはともかく、正しく確定申告をしている場合には、必要以上に恐れるものではなく、申告内容を確認してもらう程度の認識で十分です。
よく耳にする税務調査は「任意調査」というもの
一般的に税務調査といわれているものは、そのほとんどが国税通則法第34条の6第3項および第131条の規定にもとづき実施される任意調査です。
「任意」とはいうものの、正当な理由なく税務調査官からの質問などを拒否した場合、一年以下の懲役又は50万円以下の罰金刑で処罰されるので、ほぼ強制といっても差支えはありません。
よく「マルサ」として知られる国税局の査察部が行う税務調査は、事前連絡なしに乗り込んでくる強制捜査です。
マルサによる強制捜査は、検察官への告発が目的となる犯罪捜査なので、一般的な納税者にはあまり関係のないものだといえます。
税務署による実地調査は、原則的に事業者もしくは顧問税理士へ事前連絡があるので、事前に準備を行うことが可能です。
最近増えている「簡易な接触」
国税当局も人員が不足気味なのか、「文書や電話等による簡易な接触も行うなど、限られた人員等をバランスよく配分し、効果的・効率的な事務運営を心掛けています」という取り組みに力を入れています。
この「簡易な接触」とは、申告書類に疑義を持ちながらも実地調査をせず納税者に修正申告を促す取り組みです。
この簡易な接触は約7万件実施されていて、追徴税額は92億円となっています(令和5事務年度)。 税務署サイドが「簡易な接触」と称してお尋ねを送付するのは、かなり納税者の申告誤りに確信を持って行っているので、有耶無耶にせず税理士へ相談しましょう。
実地調査で調べられるポイントと帳簿・領収書の関係
一般的な実地調査においては、税務署の調査官も限られた日程のなかで申告内容が適正なのかを調べる必要があります。
この点を理解していれば、調査を受ける側としても事前準備や調査時の答弁もしやすくなり、かなり余裕をもてるものです。 ここからは、実地調査で調べられるポイントを踏まえ、帳簿や領収書などの書類の注意点を確認しましょう。
実地調査に至るまでの流れ
法人への税務調査は基本的に事前通知が原則で、たいていは税務署の調査希望日から遡って2~3週間前に電話や文書によって連絡されるのが一般的です。
税務署からは調査の希望日が伝えられますが、そのまま受け入れる必要はなく、こちらの希望あるいは税理士事務所の都合をもとにすり合わせを行い、最終的な実地調査の日程を決めます。
実地調査の日程が決まったら、申告内容に問題がないか顧問税理士と打ち合わせを行うのですが、ここで重要なのは重大な秘匿内容がないかを正直に話しておくことです。
実地調査は10時くらいから始まり16時くらいに終わることが一般的で、そこでは会社の経営者や経理担当に普通の挨拶や、調査官から税務調査の目的が話されます。
それが終われば調査官が必要な書類について要求し、経理担当が用意するという流れです。
ここで焦る必要はありませんし、答えに窮する質問があったとしても「顧問税理士と相談します」といえば済みます。
調査官が注目するポイントと会計帳簿
最近では国税庁でもAIを利用して調査対象をピックアップしているようで、税務調査の成果も多くなっているといいます。
そのAIが注目するのが、同業他社との比較や異常値を示している数値らしく、税務調査も注目点を中心に調査することになるのが普通です。
税務署も人手不足が顕著になっているようで、AIの指示どおりか分かりませんが総勘定元帳のような帳簿を丁寧に調べます。
つまり、帳簿さえしっかりしていれば税務調査対策の半分は終わったといえるのかもしれません。
特に注意するポイントは益金(収入)に関する処理で、適正な売上計上無しに税務調査を乗り切ることは困難です。

領収書まで調べられるのは危険な兆候
税務調査を効率よくやる立場にとっては、総勘定元帳を精査しさえすれば楽に調査が進みます。
しかし、そこで怪しいと判断される記載があれば領収書などの原始記録を開示するように迫られます。
損金(経費)に関していえば、交際費や福利厚生費などの経営者個人の支出が入り込みやすいところが要注意です。
交際費に関していえば、領収書に「誰とどのような目的で支出したか」という記載をすることが極めて重要で、それ無しに交際費に計上するのは危険だといえます。 税務調査を行う国税当局は、少なくない証拠をもって調査に挑んでいるので、実地調査での誤魔化しは通用しません。
極端な支出については反面調査の実施
税務調査においては、事業主あるいは会社経営者の個人的支出を指摘するのが最もコスパの高い調査となります。
怪しい支出については、その支出が適正だったのかを調べるため領収書の発行元へ調査を行う可能性があることを知っておきましょう。
これは「反面調査」といわれる行為で、税務署の調査官はどこにでも向かい、とことん調べます。
実際の反面調査事例では、交際として計上されていた飲食店を調べたところ、法人経営者が頻繁に1人で利用していた実態が判明し、役員賞与とされるなどのケースがありました。
反面調査が行われるのは、税務調査官が内容に疑問を感じる領収書があったときです。
もちろん経費などの支出だけではなく、計上されている売上高に関しても反面調査は行われますが、多くの場合は領収書がきっかけとなります。
適切な申告を行っていれば過度な心配は不要
税務調査といえば「手ぶらでは帰らない」というイメージがあるものですが、適切な税務申告を行っていれば過度な心配は不要です。
ただ、税務調査官も感情のある人なので、非協力的な態度で税務調査に臨むと徹底的に調べようという気にさせてしまいます。
税務調査で提示を求められる書類は以下のようなものなので、事前に準備しておくことが調査をスムーズに終わらせるために重要です。
- 総勘定元帳
- 現金出納帳・預金通帳
- 賃金台帳・年末調整資料
- 棚卸台帳
- 支払い関連の証憑(領収証や請求書)
- 売上関連の証憑(領収証や請求書)
- 各種契約書
- 社内規定
- 議事録
これ以外にも調査官が必要と考えた書類の提出を求められることがありますが、慌てる必要はありません。
いざという時のために税務調査に強い税理士に依頼しましょう
税務調査の目的は、表向きには確定申告の内容が適切に経理処理されたものか確認することです。
とはいえ、税務署サイドから見れば不正や所得を不当に少なくしていないか等を発見するために調査を実施しています。
相手は百戦錬磨の税務調査官なので、言葉巧みに怪しい部分を聞き出そうとします。
そんな時に税務調査に強い税理士の立ち合いがあれば、税務調査官との間にワンクッション置くことができ、調査結果にも良い影響を与えるでしょう。 また事前準備や調査後の対応もスムーズに進み、質問検査権の限界を超える調査などを防ぐことができます。

まとめ
税務調査において全ての帳簿や領収書などを見られることは現実的にはあり得ませんが、全てを見られるつもりで調査に臨むことが重要です。
税務調査の対象になった場合、事前準備や申告内容にミスがないかチェックするためにも、信頼できる税理士に依頼しておくことが安心に繋がります。
税務調査に関して不明な点があれば、弊所までお気軽にお尋ねください。
TEL:0586-48-5507
FAX:0586-64-6644
コラムの内容は、国税庁等の公式見解を示すものではありません。詳細は顧問税理士にご相談ください。当コラムの活用において生じた損害の一切の責任は負いかねます。