2026.05.15 (金)
役員貸付金・役員借入金・家族口座は税務調査でどう見られる?社長個人のお金の注意点
目次
前回は、税務調査では会社の帳簿だけでなく、必要に応じて社長個人のお金の動きまで確認されることがある、という点を解説しました。
特に、会社の売上が社長個人口座に入っている場合や、会社経費に社長個人・家族の私的支出が混ざっている場合には、税務調査で問題になりやすくなります。
中小企業では、社長が会社の資金繰り、支払い、入金確認を一人で管理していることも多く、会社と個人のお金が近くなりがちです。
しかし、法人と社長個人は別の存在です。会社のお金は会社のものであり、社長個人のお金とは区別して管理する必要があります。
第2回では、会社から社長への出金、役員貸付金、役員借入金、家族名義口座、家族への給与や外注費が、税務調査でどのように見られるのかを解説します。
会社から社長個人への出金が多い場合
会社口座から社長個人へ頻繁に振込がある場合や、会社口座から現金が引き出されている場合、税務調査では「このお金は何のための支払いですか」と確認されることがあります。
帳簿上は、役員報酬、立替経費の精算、役員借入金の返済、仮払金、役員貸付金などとして処理されていることがあります。
しかし、処理科目がついていれば問題ないというわけではありません。税務調査では、その実態が確認されます。
たとえば、立替経費の精算であれば、社長が実際に会社経費を立て替えたことを示す領収書やカード明細が必要です。
役員借入金の返済であれば、過去に社長が会社へ資金を入れた事実や、その残高との整合性が必要です。
仮払金であれば、その後に何に使ったのか、精算されているのかが確認されます。
会社から社長個人へお金が出ている場合は、「何のために支払ったのか」「どの資料で確認できるのか」を説明できる状態にしておくことが重要です。
役員貸付金が生活費のようになっている場合
会社から社長へお金が出ているものの、役員報酬ではなく、役員貸付金として処理されているケースがあります。
役員貸付金そのものが、直ちに問題になるわけではありません。会社から社長へ一時的に貸し付けることもあります。
しかし、税務調査では、その実態が確認されます。
- 返済予定がない。
- 利息を取っていない。
- 毎月のように増え続けている。
- 社長の生活費として使われている。
- 長期間、残高が減っていない。
- 会社の資金繰りを圧迫している。
このような場合には、単なる貸付金ではなく、実質的には社長への給与や賞与に近いものではないかと見られる可能性があります。
役員給与には、税務上の取扱いに制限があります。特に、役員に対する賞与は、一定の手続きを満たしていない限り、法人税の計算上、損金として認められないことがあります。
そのため、会社から社長へ出ているお金を安易に役員貸付金として処理し続けることは危険です。
役員貸付金が発生している場合は、発生理由、返済予定、返済実績、利息の取扱いなどを整理しておく必要があります。
また、金融機関から見ても、役員貸付金が多額に残っている会社は、資金管理に課題があると見られる場合があります。税務調査だけでなく、融資審査や決算説明の場面でも注意が必要です。

役員借入金の原資も確認されることがある
反対に、社長個人から会社にお金を入れている場合もあります。
会社の資金繰りが厳しいときに、社長が個人資金を会社に入れることは実務上よくあります。この場合、帳簿上は役員借入金として処理されることが多いです。
しかし、税務調査では、役員借入金の原資を確認されることがあります。
- 社長個人にその資金力があるのか。
- 過去の所得や預金残高と整合するのか。
- 実は会社の売上を一度個人口座で受け取り、その後会社に戻しているのではないか。
- 簿外の現金を会社に入れているのではないか。
このような点です。
もちろん、社長が過去の蓄えや個人借入、親族からの借入などにより会社へ資金を入れること自体はあります。ただし、その場合でも、資金の出所を説明できるようにしておくことが大切です。
役員借入金が多額に増えている場合、「社長から借りた」という説明だけでは不十分な場合があります。
いつ、どこから、どのような資金を会社に入れたのか、通帳や契約書などで確認できるようにしておくことが望ましいです。
家族名義口座や家族への支払いも確認される
税務調査では、社長本人だけでなく、家族名義の口座や家族への支払いが確認されることもあります。
たとえば、次のような場合です。
- 家族名義口座に取引先から入金がある。
- 会社の売上が家族口座に入っている。
- 会社から家族へ給与や外注費が支払われている。
- 家族への支払後、実際には社長がそのお金を使っている。
このような場合には、家族名義であっても、実質的には会社または社長のお金ではないかと確認される可能性があります。
家族に給与を支払っている場合には、実際に勤務しているのか、勤務時間はどれくらいか、どのような業務をしているのか、給与額は業務内容に見合っているかが重要です。
また、家族に外注費を支払っている場合には、実際に業務を行ったのか、成果物はあるのか、報酬額は妥当か、他の外注先と比べて不自然ではないかが確認されます。
名義だけを借りている、実際には勤務していない、支払ったお金を社長が使っているという場合には、税務上問題になる可能性があります。
家族への支払いは、税務調査で見られやすい項目です。勤務実態、業務内容、支払額の妥当性を説明できるようにしておくことが重要です。
会社と個人のお金が混ざることで生じるリスク
会社と社長個人のお金が混ざると、さまざまな税務リスクが生じます。
まず、売上除外を疑われる可能性があります。会社の売上が社長個人の口座や家族口座に入っている場合、会社の帳簿に正しく計上されているかが確認されます。計上されていなければ、売上漏れとして問題になります。
次に、経費性を否認される可能性があります。会社経費に社長個人の私的支出が混ざっている場合、事業との関連性を説明できなければ、会社の経費として認められないことがあります。
さらに、会社から社長への支払いが不明確な場合、役員賞与や役員給与に近いものとして見られる可能性があります。役員給与は、税務上の取扱いが厳しく、後から自由に経費にできるものではありません。
また、意図的に売上を個人口座に入れていた、私的支出を会社経費にしていた、資料を改ざんしていた、といった事情がある場合には、単なる処理ミスではなく、隠ぺい又は仮装があったと見られる可能性もあります。
その場合、重加算税の対象となるリスクも高まります。
税務調査では、間違いがあったこと自体も問題ですが、それ以上に「隠そうとしたかどうか」が重く見られます。会社と個人のお金を曖昧にしていると、説明が難しくなり、調査官の疑いを深める原因になります。
日頃から整理しておくべきこと
税務調査に備えるためには、日頃から会社と個人のお金を分けて管理することが大切です。
まず、売上入金は会社口座に統一することです。やむを得ず社長個人口座に入金があった場合は、内容を記録し、速やかに会社の帳簿へ反映します。個人口座に入ったまま放置しないことが重要です。
次に、社長個人のカードや口座で会社経費を立て替える場合は、精算ルールを決めておくことです。毎月精算する、領収書や明細を保存する、私的支出と会社経費を明確に区分する、といった運用が必要です。
また、役員貸付金や役員借入金を放置しないことも大切です。発生理由、返済予定、返済実績、利息の有無、資金の原資などを整理しておくことで、税務調査で説明しやすくなります。
家族への給与や外注費についても、勤務実態や業務実態を残しておく必要があります。勤務日、勤務時間、業務内容、成果物、支払金額の妥当性などを説明できるようにしておくことが望ましいです。
会社と個人のお金が混ざってしまうこと自体を完全に避けるのが難しい場合もあります。しかし、その場合でも、内容を記録し、適切に精算し、後から説明できる状態にしておくことが大切です。
まとめ
税務調査では、会社の帳簿だけでなく、必要に応じて社長個人のお金の動きまで確認されることがあります。
特に、会社から社長個人への出金が多い場合、役員貸付金や役員借入金が不明確な場合、家族名義口座を通じた資金の動きがある場合、家族への給与や外注費の実態が不明確な場合には注意が必要です。
中小企業では、会社と社長個人のお金の距離が近くなりやすいからこそ、日頃から区分して管理することが重要です。
- 会社の売上は会社口座へ入れる。
- 会社経費と私的支出を分ける。
- 立替経費は適時に精算する。
- 役員貸付金や役員借入金を放置しない。
- 家族への支払いは実態を説明できるようにする。
こうした基本的な整理をしておくことで、税務調査の際にも落ち着いて説明することができます。
税務調査で問題になる前に、会社と個人のお金の流れを見直しておくことが、結果的に会社を守ることにつながります。

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