2025.02.20 (木)

スタートアップ企業の資金調達術6選!税理士が融資成功の秘訣を解説。

   

アメリカで使われ始めた「スタートアップ企業」という言葉は、新興企業の革新性と成長スピードの速さが特徴とされます。

スタートアップ企業にとって、事業のアイデアとともに重要なのは円滑な資金調達です。

本記事では、スタートアップ企業の資金調達について、事業の成長度合いも含めた成功の秘訣を税理士が詳しく解説します。

スタートアップ企業の資金調達方法と事業の進捗状況

スタートアップ企業は成長の速さが大きな特徴とされますが、それにしてもいくつかの時期に分解できます。 ここではスタートアップ企業が事業を開始してから大きな成功へ至るまでを4つの時期に区切り、それぞれの時期に考えられる資金調達について考えてみましょう。

アイデアだけはあるシード期

事業のアイデアはあるが起業していない、あるいは起業間もない時期をシード期といい、資金調達に一番苦労するステージです。

シード期における資金調達は、返済の必要のない出資等を中心に考え、なおかつ可能な限り幅広く多くの出資先を探すことに注力しましょう。 シード期には多額の売上など望めないので、返済をともなう資金調達はリスクがあります。

起業したてのアーリーステージ期

アイデアをサービスや製品として具体化し、いよいよ市場へ投入した時期をアーリーステージ期といいます。

よほどのことがない限り、サービスや製品がすぐに市場に受け入れられることなく、市場からのフィードバックを得ながら事業内容を微調整しなければなりません。

より多くの資金が必要な時期であり、ここを乗り越えられるかどうかが一番大きな試練だといえます。 引き続き出資を中心とした資金調達がメインですが、売上の進捗状況によっては融資も視野に入れましょう。

上り調子になってくるミドル期

アーリーステージ期を乗り切りビジネスの黒字化に成功、あるいはその目途が立った時期をミドル期といいます。

黒字化に成功したとはいえ、スタートアップ企業にとってはただの通過点に過ぎず、さらなる成功を収めるため資金調達する材料に過ぎません。

この時期になると出資や融資を申し入れてくる先も増え、資金調達の選択肢も多くなっているはずです。 大規模な事業拡大を目指す段階なので、出口戦略を考えながら資金調達を行う必要があります。

成功前夜のレイター期

アイデアを事業化し順調に成長してIPO(株式公開)も視野に入っている時期をレイター期といいます。

この段階になると新規事業や海外展開なども検討しているはずで、さらに多くの資金調達が必要です。 ここまで辿り着くと知名度や信用度も相当高まっているので、ゴール後の企業のあり方や創業者としての立ち位置を考える時期でもあります。

スタートアップ企業の資金調達方法と成功の秘訣

スタートアップ企業が成功に至るまでの各ステージについて確認したところで、具体的な資金調達方法について考えていきます。 それぞれの資金調達方法の特徴をふまえて、スタートアップ企業にとってオススメの時期や注意点についても説明します。

デット・ファイナンス

一昔前まで新規事業を開始するときに、一般的な資金調達方法だったのが「デット・ファイナンス」です。デット・ファイナンス(Debt finance)とは、金融機関や公的機関からの融資による資金調達で、返済義務を伴います。

借入返済の原資は売上金になることが一般的なので、スタートアップ企業のシード期、あるいはアーリーステージ期には資金繰り破綻のリスクが考えられます。

また企業としての実績がない段階では、金融機関のプロパー融資を受けることが難しいので、利用できるのは以下の3つに限られるでしょう。

  • 日本政策融資公庫の新事業育成資金
  • 信用保証協会の保証付き融資
  • 地方自治体や機関からの制度融資

融資を受けるためには事業計画が必要になりますが、ミドル期以降であれば難しい作業ではありません。

エクイティ・ファイナンス

エクイティ・ファイナンスとは、会社の事業や取組みならびに将来性等に対し、株式を発行する対価として出資者から資金提供をうけることを指します。

一般的に「出資を受ける」といわれるもので、基本的に返済期限の定めない資金調達です。

日本のスタートアップ企業にとってエクイティ・ファイナンスが縁遠かったのは、資本市場改革が諸外国より遅れているためで、未上場株式市場が未発達だからでしょう。

近年になって中小企業庁がエクイティ・ファイナンスを普及させる取り組みをはじめ、これから環境は整備されていくものと思われます。

エクイティ・ファイナンスには、大きく分けて以下の4種類があります。

  1. 株主割当増資
  2. 第三者割当増資
  3. 公募増資
  4. 転換社債型新株予約権付社債

このうち「公募増資」や「転換社債型新株予約権付社債」は、スタートアップ企業にとってレイター期でなければ現実的な選択肢ではありません。

「株主割当増資」は、会社設立時に出資者(お金を出してくれた人)がいれば可能なもので、新株引受権を割り当て、それを行使してもらうことで資金を調達します。

これを第三者へ割り当てるのが第三者割当増資で、ベンチャーキャピタルに株式を引き受けてもらうケースはこれに該当するものです。

そもそもスタートアップ企業のスタートに当たって、出資者を探すのが一苦労なわけですが、起業時までに築き上げた人脈やアイデアの斬新さが求められます。 また、出資を受けるということは株式や議決権の割合に変化を及ぼすので、会社の経営権が影響を受ける可能性もあります。

持ち株比率による株主の権利

持ち株比率● 株主の権利
1%以上● 株主提案権
3%以上● 株主総会の招集請求権
● 役員の解任請求権
33.4%以上(3分の1以上)● 特別決議を要する決議の否決権
50%以上(過半数以上)● 取締役の選任・解任決議
● 役員報酬の決議
● 自己株式の取得決議
66.7%以上(3分の2以上)● 定款変更決議
● 組織変更・事業譲渡などの決議
● 相続人への株式に対する売渡請求決議

経営における自由度の観点で考えれば、経営者が3分の2以上の株式を持っていなければ、経営しにくい状態だといえるでしょう。

 

助成金や補助金

国や地方自治体が政策的な目的を遂行するために実施しているのが助成金や補助金、近年はスタートアップ企業を支援するものが増えてきました。

大きなメリットは基本的に返済の必要がないことで、助成金や補助金の申請要件を満たしさえすれば資金調達できます。

ただ、助成金や補助金は年度ごとに制度が変化していき、なおかつ提出書類も多く手間がかかる点がデメリットです。 利用するのであれば税理士など外部の専門家を活用するのがオススメです。

クラウドファンディング

クラウドファンディングは、仲介業者を通して、不特定多数の個人などから資金を調達する方法で、スタートアップ企業との相性が良い資金調達方法です。

少額から募集できるのがクラウドファンディングのメリットで、以下のような種類があります。

  • 見返りとして商品やサービスを提供する購入型
  • 基本的にリターンのない寄付型
  • 仲介事業者が集めた資金を貸す融資型
  • 非公開株を提供する代わりに資金を募る投資型
  • 仲介事業者が出資を募るファンド型

いずれにしても、事業のアイデアや地域貢献などの社会貢献性が求められます。

アセットファイナンス

企業が保有する資産を売却して資金調達をする方法がアセットファイナンスですが、シード期やアーリーステージ期には縁のない資金調達方法でしょう。

ただ、企業経営が軌道に乗ってくると使い勝手が良くなるもので、売上債権を譲渡するファクタリングサービスは急な資金需要に素早く対応できる方法です。 基本的には資産を売却しながら金利のかかるファイナンス商品なので、あまり多用することはオススメできません。

 

社債

社債とは、企業が事業資金を調達するために発行する債券のことで、引き受けるのは主に個人投資家です。

投資家からダイレクトに資金を調達することから「直接金融」と呼ばれ、多くの上場企業で利用されています。

ただ知名度のないスタートアップ企業では、社債を引き受けてもらうことが難しいといえるでしょう。 銀行などの金融機関が引き受け手になる社債もありますが、実質的にはデット・ファイナンスの一種です。

まとめ

スタートアップ企業が成功するためには、事業のアイデアと同じくらい資金調達が重要になってきます。

諸外国に比べて遅れていたスタートアップ企業の事業環境ですが、国もようやく重要性に気づき、多くの支援策が取られるようになってきました。

ただ、スタートアップ企業は人的リソースも限られることから、資金調達方法については税理士などの支援を受けることがオススメです。 また、これからはエクイティ・ファイナンスが盛んになってくるので、そのノウハウをもった専門家が頼りになるでしょう。

税務調査に関して不明な点があれば、弊所までお気軽にお尋ねください。

 

TEL:0586-48-5507 

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コラムの内容は、国税庁等の公式見解を示すものではありません。詳細は顧問税理士にご相談ください。当コラムの活用において生じた損害の一切の責任は負いかねます。

記事の著者

スタートアップサポート税理士法人代表者。
総合病院の勤務医のような存在よりも、個々の企業にとってのホームドクターのような存在でありたいと考えております。
日々の細かい会計処理のことから資金繰りや雇用、助成金、企業経営者にとって何でも気軽に相談できる良きパートナーとして専門的知識を生かしていきたい所存です。