2026.05.08 (金)
税務調査では社長個人の通帳まで見られる?会社と個人のお金が混ざるリスク
中小企業、とくに社長が株主でもあるオーナー企業では、会社のお金と社長個人のお金の距離が近くなりがちです。
会社の支払いを社長個人のクレジットカードで立て替える。
資金繰りが厳しいときに、社長個人のお金を会社口座に入れる。
会社の口座から社長個人の支払いをしてしまう。
法人成り後も、以前から使っていた個人口座に売上が入っている。
このようなことは、実務上決して珍しくありません。
しかし、税務調査では、この「会社のお金」と「社長個人のお金」の境目が非常に重要な確認ポイントになります。
法人と社長個人は、法律上は別の存在です。会社のお金は会社のものであり、社長個人のお金とは区別して管理する必要があります。ところが、中小企業では社長が資金繰り、通帳管理、支払い、入金確認を一人で行っていることも多く、会社と個人のお金が混ざりやすいのが実情です。
税務調査では、会社の帳簿だけでなく、必要に応じて社長個人の口座や家族名義の口座、個人カードの利用状況などが確認されることがあります。
今回は、全2回の第1回として、税務調査でなぜ社長個人のお金が見られるのか、個人口座への売上入金や個人カードでの経費精算がなぜ問題になりやすいのかを解説します。
なぜ社長個人のお金が税務調査で見られるのか
税務調査では、会社の申告内容が正しいかどうかを確認します。
その際、調査官は申告書や決算書、総勘定元帳だけを見るわけではありません。売上、経費、預金、現金、役員とのお金のやり取りなどを確認し、会社の取引や資金の流れが帳簿と合っているかを見ます。
中小企業の場合、社長が会社のお金を実質的に管理していることが多いため、会社の取引が社長個人の口座や支出とつながっていないかが確認されることがあります。
たとえば、次のような点です。
- 会社の売上が社長個人の口座に入っていないか。
- 会社の経費として処理されている支出に、社長個人や家族の私的支出が混ざっていないか。
- 会社から社長へ出ているお金が、役員報酬なのか、経費精算なのか、貸付金なのか。
- 社長個人から会社へ入金されたお金の原資は何か。
- 会社の現金が社長個人の生活費に使われていないか。
会社の帳簿だけを見ると問題がないように見えても、実際のお金の流れを確認すると、社長個人の口座やカード明細と関係していることがあります。
そのため、税務調査では、会社と社長個人のお金の関係が確認されるのです。
社長個人の通帳が確認されることがあるケース
税務調査で特に注意したいのは、会社の売上が社長個人の口座に入っているケースです。
たとえば、次のような場合です。
- 取引先からの振込先が社長個人口座になっている。
- 現金売上を社長個人の口座に入金している。
- ネット販売や決済サービスの入金先が、会社口座ではなく社長個人口座になっている。
- 個人事業時代の口座を、法人成り後もそのまま使っている。
このような場合、税務調査では、その入金が会社の売上なのか、社長個人の収入なのかを確認されます。
取引先が会社との取引として支払っているにもかかわらず、会社の帳簿に売上として計上されていなければ、売上計上漏れを疑われる可能性があります。
また、社長個人の口座から会社経費を支払っている場合も確認対象になります。
社長個人のクレジットカードや銀行口座で会社経費を立て替えること自体は、実務上よくあります。問題は、その中に私的支出が混ざっていないか、会社との精算が適正に行われているか、領収書や明細が残っているかです。
社長個人のカード明細には、会社経費と個人の買い物が混在しやすくなります。その場合、どれが会社の経費で、どれが私的支出なのかを明確に説明できる状態にしておく必要があります。

社長個人口座への売上入金は特に注意
会社の売上が社長個人口座に入っている場合、税務調査では特に慎重に確認されます。
たとえば、取引先が「会社への支払い」として社長個人口座に振り込んでいる場合、その入金は原則として会社の売上として整理すべきものです。
にもかかわらず、会社の帳簿に売上として計上されていない場合には、売上除外を疑われる可能性があります。
「個人口座に入ったので会社の売上ではない」という説明は通りにくいです。大切なのは、誰の口座に入ったかだけではなく、その入金がどのような取引に基づくものかです。
- 契約の相手方が会社なのか。
- 請求書の発行者が会社なのか。
- 取引先が誰に対して支払ったと認識しているのか。
- 商品やサービスを提供したのは会社なのか。
こうした点から、実質的に判断されます。
特に、個人事業から法人成りした直後は注意が必要です。
法人成り前から使っていた個人口座や決済サービスを、そのまま使い続けてしまうことがあります。しかし、法人設立後の会社取引に関する売上が個人口座に入っている場合は、会社の売上として処理する必要があります。
法人成り後は、できるだけ早く売上入金先を会社口座に統一し、個人口座と会社口座を明確に分けることが重要です。
会社経費に私的支出が混ざっている場合
中小企業の税務調査でよく確認されるのが、会社経費に社長個人や家族の私的支出が混ざっていないかという点です。
たとえば、次のような支出です。
- 家族旅行を出張旅費として処理している。
- 個人的な飲食代を接待交際費にしている。
- 自宅で使う日用品を会社の消耗品費にしている。
- 家族のスマートフォン代を会社の通信費にしている。
- 私用車の費用を全額会社経費にしている。
このような支出は、税務調査で確認されやすい項目です。
領収書があるからといって、必ず会社の経費になるわけではありません。税務上、経費として処理するためには、会社の事業との関連性や業務上の必要性を説明できることが重要です。
たとえば、飲食代であれば、誰と、何の目的で、どのような打ち合わせをしたのかが確認されます。旅費であれば、訪問先、日程、目的、業務との関係が確認されます。車両費であれば、その車を会社業務でどの程度使っているのか、私用部分がないかが見られます。
会社経費として処理している支出については、「会社のために必要だった」と説明できる資料や記録を残しておくことが大切です。
まとめ
税務調査では、会社の申告内容が正しいかどうかを確認するため、会社の帳簿だけでなく、社長個人のお金の動きまで確認されることがあります。
特に、会社の売上が社長個人口座に入っている場合や、社長個人のカードで会社経費を立て替えている場合には注意が必要です。
会社と個人のお金が混ざっていると、売上除外や私的支出の経費計上を疑われる可能性があります。
大切なのは、会社のお金と社長個人のお金を明確に分けることです。やむを得ず個人口座や個人カードを使う場合でも、内容を記録し、会社経費と私的支出を区分し、後から説明できる状態にしておく必要があります。
次回は、会社から社長への出金、役員貸付金、役員借入金、家族名義口座や家族への支払いが、税務調査でどのように見られるのかを解説します。

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